グラドとベイヤーのハイエンドモデルをレビュー!
老舗ブランドの最新モデル一気に聴いてみた
ブランドの違いがよく分かりました
覆面レビュワー「ラビットBW」です。今回も消費者目線で忖度なしに「白黒」判定します。
今回は、「アバックヘッドホン横浜店」道場破りの[Part3]。[Part1]ではわかったつもりだったスタックスの進化っぷりに度肝を抜かれ、[Part2]ではレビンソンとB&WのBluetoothヘッドホンをレビューしました。
part1はこちら
part2はこちら
今回は、知ってるようで知らない、老舗ブランドの今。「GRADO(グラド)」と「beyerdynamic(ベイヤー)」の現行ワイヤードモデルを一挙試聴します。
■他にない暖かいトーンが味わえる グラド「GS1000x Balanced」
グラドは、ニューヨーク・ブルックリンのメーカー。イタリアかフランスあたりにありそうな手作りにこだわり、暖かくて官能的なサウンドが特徴です。ジョン・グラドがテノール歌手・ヴァイオリニストというのも納得です。

かつて私も当時のフラッグシップモデル「RS-1」を私用していました。とにかく音が生々しく、羊羹のように濃厚。声フェチにはたまりません。ただし耳介の大きい私には装着感が悪くて、実はベイヤーのイヤーパットを装着できるよう解像して使っていたのは内緒。
さて、そんな先入観がある私が最初に手に取ったのは、「GS1000x Balanced」(定価210,100円・税込)。

バランス接続らしいディスクリート再生(LRの分離)が強く感じます。たとえば、マーヴィン・ゲイの『What's Going ON』では、ギターがしっかり左下に定位します。
また、かつての印象よりやはりワイドレンジで、若干ハイ上がりに聞こえるフシも。より現代的になっているようです。
かといって、アコースティック系はイメージ通りに滑らかで豊かな響きが堪能できます。たとえば、ビル・エバンスの『ワルツ・フォー・デヴィ』では、鍵盤の上を滑るようなピアノが印象的。ウッドベースの倍音が豊かで、ハットのチンという煌めきだけでなく、グラスの触れあうカチンと鳴る音までが粋な演出のように心に響きます。ヒラリー・ハーンのヴァイオリンとヴァレンティーナ・リシッツァのピアノによるソナタも、壮絶なテクニックの応酬すら決して刺激的でなく、強いアタックまでもスムーズです。
装着感はとても良くなっています。そして、ガボッと耳を覆うサイズなのに、さすがグラドという軽さ。側圧はほぼなく、頭頂部に載せるタイプです。

■最高にフェティッシュ!グラド「GS3000x Balanced」
次に、「GS3000x Balanced」(定価333,300円・税込)に換えます。

すると、えっ、こんなに違うの?とぱっと聴きでも分かるぐらい、全然違います。かつてRS2と比較してRS1を手に取ったときのことが思い浮かびました。
全体のバランスやニュアンスは同様なのですが、濃密感が桁違いに上がります。「GS1000x」が上質な“こしあん”だとすれば、「GS3000x」は、ねっとりと濃厚な羊羹。わたしの記憶にある「RS1」は、この感じでした。
クラシックのヴァイオリンの響きなんか最高にフェティッシュで心震えます。ビル・エバンス『ワルツ・フォー・デヴィ』も、会場の暗騒音がリアルすぎて、ほんとうにその場でPA係をやらされているような生々しさです。
一方、マイケル・ジャクソンのようなロックも、きちんと歯切れ良くこなすんです。『Wanna Be Starting Something』も、アナログレコードではなくリマスター版のデジタルファイルを聴いている感じがでています。
グラドも、かつての濃厚な印象を残しながら、きちんと現代的に進化しているのだなぁと実感。いつまでも聴いていたい、わたしにとっては昔好きだった女性に再会したような、不思議と郷愁と感動を誘うサウンドです。
装着感は「GS1000x」と同様。耳介まですっぽり覆われて軽いので、長く聴いていられそうです。
グラドは、ニューヨーク・ブルックリンのメーカー。イタリアかフランスあたりにありそうな手作りにこだわり、暖かくて官能的なサウンドが特徴です。ジョン・グラドがテノール歌手・ヴァイオリニストというのも納得です。
かつて私も当時のフラッグシップモデル「RS-1」を私用していました。とにかく音が生々しく、羊羹のように濃厚。声フェチにはたまりません。ただし耳介の大きい私には装着感が悪くて、実はベイヤーのイヤーパットを装着できるよう解像して使っていたのは内緒。
さて、そんな先入観がある私が最初に手に取ったのは、「GS1000x Balanced」(定価210,100円・税込)。
バランス接続らしいディスクリート再生(LRの分離)が強く感じます。たとえば、マーヴィン・ゲイの『What's Going ON』では、ギターがしっかり左下に定位します。
また、かつての印象よりやはりワイドレンジで、若干ハイ上がりに聞こえるフシも。より現代的になっているようです。
かといって、アコースティック系はイメージ通りに滑らかで豊かな響きが堪能できます。たとえば、ビル・エバンスの『ワルツ・フォー・デヴィ』では、鍵盤の上を滑るようなピアノが印象的。ウッドベースの倍音が豊かで、ハットのチンという煌めきだけでなく、グラスの触れあうカチンと鳴る音までが粋な演出のように心に響きます。ヒラリー・ハーンのヴァイオリンとヴァレンティーナ・リシッツァのピアノによるソナタも、壮絶なテクニックの応酬すら決して刺激的でなく、強いアタックまでもスムーズです。
装着感はとても良くなっています。そして、ガボッと耳を覆うサイズなのに、さすがグラドという軽さ。側圧はほぼなく、頭頂部に載せるタイプです。
■最高にフェティッシュ!グラド「GS3000x Balanced」
次に、「GS3000x Balanced」(定価333,300円・税込)に換えます。
すると、えっ、こんなに違うの?とぱっと聴きでも分かるぐらい、全然違います。かつてRS2と比較してRS1を手に取ったときのことが思い浮かびました。
全体のバランスやニュアンスは同様なのですが、濃密感が桁違いに上がります。「GS1000x」が上質な“こしあん”だとすれば、「GS3000x」は、ねっとりと濃厚な羊羹。わたしの記憶にある「RS1」は、この感じでした。
クラシックのヴァイオリンの響きなんか最高にフェティッシュで心震えます。ビル・エバンス『ワルツ・フォー・デヴィ』も、会場の暗騒音がリアルすぎて、ほんとうにその場でPA係をやらされているような生々しさです。
一方、マイケル・ジャクソンのようなロックも、きちんと歯切れ良くこなすんです。『Wanna Be Starting Something』も、アナログレコードではなくリマスター版のデジタルファイルを聴いている感じがでています。
グラドも、かつての濃厚な印象を残しながら、きちんと現代的に進化しているのだなぁと実感。いつまでも聴いていたい、わたしにとっては昔好きだった女性に再会したような、不思議と郷愁と感動を誘うサウンドです。
装着感は「GS1000x」と同様。耳介まですっぽり覆われて軽いので、長く聴いていられそうです。
■ベイヤーらしさを知るための「AMIRON HOME」
ここからはドイツのbeyerdynamic(ベイヤー)の試聴に移ります。同社は創業1924年ですので、2024年はなんと創業100周年。現在、国内代理店は株式会社オーディオブレインズになっています。今回聴くのは、すべてアンバランス接続です(リケーブルでバランス化も可能)。

同社がいまの最新技術TESLA(テスラ)をドライバーに導入する以前に、私もかつてDTシリーズを私用していたことがあり、フラットで淀みないクリアな開放的サウンドと快適な装着感が印象に残っています。その反動でGRADOの「RS1」を購入したので、ある意味GRADOとは真逆とも言えるキャラクターかも。
今回最初に聴いたのは、「AMIRON HOME」。

Tシリーズではないものの、家庭用に最適化されたTESLAテクノロジーを採用しているとのこと。インピーダンスは250Ωなので、ゲインが低いアンプではちょっと辛いかもしれません。
まず驚いたのは、アンバランス接続なのに定位感がひじょうに優れていること。メーカーの設計が優れていることの証左で、「バランス接続だから云々〜」とは軽はずみに言えないのだと分かります。
サウンドは、グラドのような濃密で密着した感じというより、クリーンで開放的に音場を描き出す方向です。たとえば、ヒラリー・ハーンのヴァイオリンの震え、ヴァレンティーナ・リシッツァのピアノのカーンとしたアタックはきわめて正確な印象ですが、ステージ下で聴いているようなやや遠い印象です。もっとも、解像感が低いつるりとした印象ではなく、たとえば、ダイアナ・クラール『The Girl In The Other Room』のようなハスキーボイスも、ざらついたニュアンスをよく出しており、解像感は高いのです。
装着感は、Tシリーズにさほど劣らないベロア調のイヤーパットが気持ちよく、本体も軽くて側圧も強くないので、極めて快適です。

■ベイヤーだと密閉もこうなる「T5」
次に手に取ったのが、「T5」でした。

耳にした瞬間、「え?これがベイヤー??」と二度見。タイトでクールでダイレクトな印象はKOSSみたい…と思ったら、密閉型なんですね。音場豊かで“音源から遠い”というベイヤーに対するイメージとはだいぶかけ離れています。
たとえば、ダイアナ・クラールのハスキーなジャズ・ヴォーカルは至近距離で濃密に迫ってきます。ヒラリー・ハーンのヴァイオリンとヴァレンティーナ・リシッツァのピアノの関係もスリリングで緊張感を帯びてきます。弾き手の呼吸までも意識させるような緊張感は、密閉型になったことでベイヤーが持つ解像度が漏らさず発揮されたのでしょう。もともと味付けのないモニター調ですが、開放型より格段に緊張感が高い。ロックになると、マイケル・ジャクソン『Starting Something』などは耳に痛いほどの切れ味です。かといって、サ行がキツくなることがないのは、さすがベイヤーです。
着感は、快適フカフカというイメージのベイヤーにしてはやや硬め。密閉する必要があるからでしょう、ベロアでなく人工皮革を採用しているためです。

■ベイヤーらしさの頂点「T1」
「T1」は開放型。現行モデルはすでに3代目になります。32Ωとなったことで鳴らしやすくなっているのも嬉しいところ。

一聴してニンマリ。これぞベイヤーの成熟版と太鼓判を押せます。多くがイメージしているベイヤーサウンドとして、文句なし。解像度は高いのに、サ行はキツくない。音場感があり、長時間聴いても疲れないし心地よい、フラットかつ上品なサウンドです。
たとえば、ヒラリー・ハーンのヴァイオリンとヴァレンティーナ・リシッツァのピアノの掛け合いも、匠の技としてステージ下の特等席でゆったり独占して聴いている印象。一方で、マイケル・ジャクソンのような切れ味鋭いロックも、バランス良く正確にきっちり鳴ります。「AMIRON HOME」を重厚かつ繊細、上質かつ隙のない仕様にした頂点のモデルと考えます。
装着感も最高。ベロアの肌触りに加え、メモリーフォームでテンピュールの枕のようにすっと顔にフィットします。
ここからはドイツのbeyerdynamic(ベイヤー)の試聴に移ります。同社は創業1924年ですので、2024年はなんと創業100周年。現在、国内代理店は株式会社オーディオブレインズになっています。今回聴くのは、すべてアンバランス接続です(リケーブルでバランス化も可能)。
同社がいまの最新技術TESLA(テスラ)をドライバーに導入する以前に、私もかつてDTシリーズを私用していたことがあり、フラットで淀みないクリアな開放的サウンドと快適な装着感が印象に残っています。その反動でGRADOの「RS1」を購入したので、ある意味GRADOとは真逆とも言えるキャラクターかも。
今回最初に聴いたのは、「AMIRON HOME」。
Tシリーズではないものの、家庭用に最適化されたTESLAテクノロジーを採用しているとのこと。インピーダンスは250Ωなので、ゲインが低いアンプではちょっと辛いかもしれません。
まず驚いたのは、アンバランス接続なのに定位感がひじょうに優れていること。メーカーの設計が優れていることの証左で、「バランス接続だから云々〜」とは軽はずみに言えないのだと分かります。
サウンドは、グラドのような濃密で密着した感じというより、クリーンで開放的に音場を描き出す方向です。たとえば、ヒラリー・ハーンのヴァイオリンの震え、ヴァレンティーナ・リシッツァのピアノのカーンとしたアタックはきわめて正確な印象ですが、ステージ下で聴いているようなやや遠い印象です。もっとも、解像感が低いつるりとした印象ではなく、たとえば、ダイアナ・クラール『The Girl In The Other Room』のようなハスキーボイスも、ざらついたニュアンスをよく出しており、解像感は高いのです。
装着感は、Tシリーズにさほど劣らないベロア調のイヤーパットが気持ちよく、本体も軽くて側圧も強くないので、極めて快適です。
■ベイヤーだと密閉もこうなる「T5」
次に手に取ったのが、「T5」でした。
耳にした瞬間、「え?これがベイヤー??」と二度見。タイトでクールでダイレクトな印象はKOSSみたい…と思ったら、密閉型なんですね。音場豊かで“音源から遠い”というベイヤーに対するイメージとはだいぶかけ離れています。
たとえば、ダイアナ・クラールのハスキーなジャズ・ヴォーカルは至近距離で濃密に迫ってきます。ヒラリー・ハーンのヴァイオリンとヴァレンティーナ・リシッツァのピアノの関係もスリリングで緊張感を帯びてきます。弾き手の呼吸までも意識させるような緊張感は、密閉型になったことでベイヤーが持つ解像度が漏らさず発揮されたのでしょう。もともと味付けのないモニター調ですが、開放型より格段に緊張感が高い。ロックになると、マイケル・ジャクソン『Starting Something』などは耳に痛いほどの切れ味です。かといって、サ行がキツくなることがないのは、さすがベイヤーです。
着感は、快適フカフカというイメージのベイヤーにしてはやや硬め。密閉する必要があるからでしょう、ベロアでなく人工皮革を採用しているためです。
■ベイヤーらしさの頂点「T1」
「T1」は開放型。現行モデルはすでに3代目になります。32Ωとなったことで鳴らしやすくなっているのも嬉しいところ。
一聴してニンマリ。これぞベイヤーの成熟版と太鼓判を押せます。多くがイメージしているベイヤーサウンドとして、文句なし。解像度は高いのに、サ行はキツくない。音場感があり、長時間聴いても疲れないし心地よい、フラットかつ上品なサウンドです。
たとえば、ヒラリー・ハーンのヴァイオリンとヴァレンティーナ・リシッツァのピアノの掛け合いも、匠の技としてステージ下の特等席でゆったり独占して聴いている印象。一方で、マイケル・ジャクソンのような切れ味鋭いロックも、バランス良く正確にきっちり鳴ります。「AMIRON HOME」を重厚かつ繊細、上質かつ隙のない仕様にした頂点のモデルと考えます。
装着感も最高。ベロアの肌触りに加え、メモリーフォームでテンピュールの枕のようにすっと顔にフィットします。
■結論 ブランドのトーンを生かして緻密に進化
輸入品ということもあり、それぞれずいぶん価格も上がってしまいました。しかし老舗ブランドの最新モデルは、それぞれの核とも言える『音色』『トーン』を生かしながら着実に進化していることが窺えました。どちらも解像度は高く、聴くソースも選びませんが、ヘッドホンに何を求めるかによってチョイスが違います。それぞれの特徴を最後にまとめておきましょう。
●「GRADO」はこんな人にオススメ!
・濃厚でねちっこいサウンドが好きな人
・演奏者に近い距離で聴きたい、音像重視の人
・買うなら断然トップモデル「GS3000x」
●「beyerdynamic」はこんな人にオススメ!
・解像度高く滑らかなサウンドが好きな人
・ホールで聴くようなイメージで、音場型志向の人(開放型の場合)
・快適な装着感を求める人
・「T1」がオススメだが、「AMIRON HOME」でも十分ベイヤーらしさは味わえる
ちなみに、個人的に欲しいのは「GS3000x」かな。私邸のオーディオシステムが英国KEFとドイツAccustic Artsという比較的冷静沈着な音場型システムなので、ヘッドホンはそれと異なり、フェティッシュにヴォーカル(セリフ)や楽器の音色に迫りたいため。
最新のヘッドホンショップという事でアジア圏を始めとした新進気鋭のブランドが揃うのかなと思いましたが、むしろ私のようなシアター畑、オーディオ畑を長く歩んできた人間に親しみのあるブランドが多いのもアバックヘッドホン横浜店の特徴であり良さと思えました。
ヘッドホンブーム黎明期に市場を沸かせた当時の名門もしっかり進化している事を、ノイズレスな視聴空間で体感出来ます。一度来店されては如何でしょうか。
輸入品ということもあり、それぞれずいぶん価格も上がってしまいました。しかし老舗ブランドの最新モデルは、それぞれの核とも言える『音色』『トーン』を生かしながら着実に進化していることが窺えました。どちらも解像度は高く、聴くソースも選びませんが、ヘッドホンに何を求めるかによってチョイスが違います。それぞれの特徴を最後にまとめておきましょう。
●「GRADO」はこんな人にオススメ!
・濃厚でねちっこいサウンドが好きな人
・演奏者に近い距離で聴きたい、音像重視の人
・買うなら断然トップモデル「GS3000x」
●「beyerdynamic」はこんな人にオススメ!
・解像度高く滑らかなサウンドが好きな人
・ホールで聴くようなイメージで、音場型志向の人(開放型の場合)
・快適な装着感を求める人
・「T1」がオススメだが、「AMIRON HOME」でも十分ベイヤーらしさは味わえる
ちなみに、個人的に欲しいのは「GS3000x」かな。私邸のオーディオシステムが英国KEFとドイツAccustic Artsという比較的冷静沈着な音場型システムなので、ヘッドホンはそれと異なり、フェティッシュにヴォーカル(セリフ)や楽器の音色に迫りたいため。
最新のヘッドホンショップという事でアジア圏を始めとした新進気鋭のブランドが揃うのかなと思いましたが、むしろ私のようなシアター畑、オーディオ畑を長く歩んできた人間に親しみのあるブランドが多いのもアバックヘッドホン横浜店の特徴であり良さと思えました。
ヘッドホンブーム黎明期に市場を沸かせた当時の名門もしっかり進化している事を、ノイズレスな視聴空間で体感出来ます。一度来店されては如何でしょうか。
GS3000x GRADO [グラド] ヘッドホン
¥315,810
税込
商品コード: GS3000X