[自宅レビュー!]
サイズを超えたスケール感!
Monitor Audio「Studio 89」
80年代ロック&POPSのみならず、最新POPSや映画も上手くこなす
覆面レビュワー「ラビットBW」です。今回も消費者目線で忖度なしに「白黒」判定すべく、自宅リポートします。
今回とりあげるのは、この夏発売された、英国のスピーカーメーカー、モニターオーディオの新製品「Studio 89」です。見たことある!と思ったあなたはTIAS(インターナショナルオーディオショウ)にいつも足を運ぶようなマニアの方。5〜6年ほど前に出たコンパクトでリーズナブルながらトップエンドPlatinumシリーズ譲りのユニットを搭載したコンパクトブックシェルフ「Studio」によく似ておりますが、果たして。
[特徴]
●「Studio 89」のポイント
・トップエンドPlatinumシリーズ譲りのユニットを採用
・デスクトップスピーカーの中でもかなりコンパクトな面構え
・トゥイーターをウーファーが挟み込む仮想同軸配置
●実際使ってみたら凄かった!
・サイズを超えたスケール感
・“スタジオモニター”という割には、情緒的な表現力が魅力
・高拡散でクセのないリボントゥイーターが、広い音場を実現
・英国にしては中域の押し出し感あり
・80〜90年代CD黎明期のロック&POPSにドンピシャ。最新POPSや映画も上手く捌く
今回とりあげるのは、この夏発売された、英国のスピーカーメーカー、モニターオーディオの新製品「Studio 89」です。見たことある!と思ったあなたはTIAS(インターナショナルオーディオショウ)にいつも足を運ぶようなマニアの方。5〜6年ほど前に出たコンパクトでリーズナブルながらトップエンドPlatinumシリーズ譲りのユニットを搭載したコンパクトブックシェルフ「Studio」によく似ておりますが、果たして。
[特徴]
●「Studio 89」のポイント
・トップエンドPlatinumシリーズ譲りのユニットを採用
・デスクトップスピーカーの中でもかなりコンパクトな面構え
・トゥイーターをウーファーが挟み込む仮想同軸配置
●実際使ってみたら凄かった!
・サイズを超えたスケール感
・“スタジオモニター”という割には、情緒的な表現力が魅力
・高拡散でクセのないリボントゥイーターが、広い音場を実現
・英国にしては中域の押し出し感あり
・80〜90年代CD黎明期のロック&POPSにドンピシャ。最新POPSや映画も上手く捌く
■[デザイン] CDジャケ2枚分のバッフルに、渋いゴールドのユニット&バッジ
CDジャケット2枚分強の前面バッフルに、ユニットを上下左右対称に配置。
中央に配置された高域を司る平面振動板トゥイーター(MPD Ⅲ)を、2発の108mmコーン型ウーファー(RDT III)が挟むことで、コンパクトな面積でトゥイーターを中心とした同軸ユニットと同じ効果を狙っています(仮想同軸)。

仮想同軸構成。ウーファーは先代「Studio」(10cm)より僅かに大きい108mm
思い出されるのは、15年ほど前のフォステクスGX102や、ちょっと大きいけれど20年以上前に流行ったウィルソンオーディオ「CUB」。横倒しにするとセンタースピーカーとしても相応しく、5本同じスピーカーで揃えて5ch同一スピーカーによるサラウンド再生ができたんです。
その点、「Studio 89」は、エンクロージャー底面にあたる部分にバッジがある上、専用スタンド「Studio 89 Stand」とボルト留めする穴も空いているので、そうしたシアター用途は想定していない様子。KEF LS50のように、きっといいに違いないと思うのですが。

■欲張らない仕様が、結果、ウェルバランスで鳴らしやすく、洗練
ここで、先代「Studio」(発売時定価242,000円/ペア)とスペック上の比較しましょう。
先代「Studio」が、周波数特性48Hz〜60,000Hz、インピーダンス4Ω (最低2.9Ω@3.5kHz)、寸法/質量はW156.2×H340×D360.9mm/7.1kgなのに対し、この「Studio 89」(定価385,000円/ペア)は、周波数特性53Hz〜60,000Hz、インピーダンス6Ω(最低4.2Ω@220Hz)、W157×H340×D301mm/7.6kgとあります。
これを見ると、先代「Studio」が低音域を出そうとエンクロージャーの奥行きを長く、インピーダンスも低めに設定していたのに対し、「Studio 89」では、より鳴らし易い方向に振っているように見えます。
詳しくは次項以降のインプレッションをお読みいただきたいのですが、実際に聴いてみるとまったくその通りの印象なんです。
「Studio 89」は音量を絞っても普通に鳴りますし、上も下も帯域を欲張っていない分、中域厚めで張り出したような音像が立ち現れます。
そして、モニターオーディオ元来の特徴だったドームトゥイーターのややキツメでビーム状の高域と違い、「Studio 89」ではクセがなく高拡散の平面振動板を採用したお陰で、ヨーロッパのスピーカーっぽい、いくぶん落ち着いたトーンの洗練されたハイファイトーンに仕上がっていると思います。

平面振動板を2発のウーファーで挟む

シングルワイアリングのスピーカー端子

バスレフポートは最近流行のスリットタイプ

スタンドとはボルトで連結
CDジャケット2枚分強の前面バッフルに、ユニットを上下左右対称に配置。
中央に配置された高域を司る平面振動板トゥイーター(MPD Ⅲ)を、2発の108mmコーン型ウーファー(RDT III)が挟むことで、コンパクトな面積でトゥイーターを中心とした同軸ユニットと同じ効果を狙っています(仮想同軸)。
仮想同軸構成。ウーファーは先代「Studio」(10cm)より僅かに大きい108mm
思い出されるのは、15年ほど前のフォステクスGX102や、ちょっと大きいけれど20年以上前に流行ったウィルソンオーディオ「CUB」。横倒しにするとセンタースピーカーとしても相応しく、5本同じスピーカーで揃えて5ch同一スピーカーによるサラウンド再生ができたんです。
その点、「Studio 89」は、エンクロージャー底面にあたる部分にバッジがある上、専用スタンド「Studio 89 Stand」とボルト留めする穴も空いているので、そうしたシアター用途は想定していない様子。KEF LS50のように、きっといいに違いないと思うのですが。
■欲張らない仕様が、結果、ウェルバランスで鳴らしやすく、洗練
ここで、先代「Studio」(発売時定価242,000円/ペア)とスペック上の比較しましょう。
先代「Studio」が、周波数特性48Hz〜60,000Hz、インピーダンス4Ω (最低2.9Ω@3.5kHz)、寸法/質量はW156.2×H340×D360.9mm/7.1kgなのに対し、この「Studio 89」(定価385,000円/ペア)は、周波数特性53Hz〜60,000Hz、インピーダンス6Ω(最低4.2Ω@220Hz)、W157×H340×D301mm/7.6kgとあります。
これを見ると、先代「Studio」が低音域を出そうとエンクロージャーの奥行きを長く、インピーダンスも低めに設定していたのに対し、「Studio 89」では、より鳴らし易い方向に振っているように見えます。
詳しくは次項以降のインプレッションをお読みいただきたいのですが、実際に聴いてみるとまったくその通りの印象なんです。
「Studio 89」は音量を絞っても普通に鳴りますし、上も下も帯域を欲張っていない分、中域厚めで張り出したような音像が立ち現れます。
そして、モニターオーディオ元来の特徴だったドームトゥイーターのややキツメでビーム状の高域と違い、「Studio 89」ではクセがなく高拡散の平面振動板を採用したお陰で、ヨーロッパのスピーカーっぽい、いくぶん落ち着いたトーンの洗練されたハイファイトーンに仕上がっていると思います。
平面振動板を2発のウーファーで挟む
シングルワイアリングのスピーカー端子
バスレフポートは最近流行のスリットタイプ
スタンドとはボルトで連結
■[音楽再生1] “Studio”という割には情緒たっぷり
拙宅に届いた「Studio 89」の外箱には、「Listen Again」の意味深な文字が。何を意味するのか念頭に置きながら聴いていきましょう。
さきにレビューしたECLIPSE「TD508MK4」と同様に、コンパクトなブックシェルフシステムですが、専用スタンドに据え付けて聴いていきます。駆動するアンプは独Accustic ArtsプリメインアンプPOWER1 MK3です。
まず、LINNのネットワークプレーヤーSELEKT DSM-Kで、拙宅NAS内のファイル再生をします。
ピアニストで作曲家のアルベルト・ギノバルトの自作自演協奏曲第1番を選びます。美しいピアノのソロと、オーケストラが加わったときのスケール感のコントラストが聴き所です。
まず驚いたのは、ボリュウムをさほど上げなくても十分な音量を得られること。コンパクトなのでそれなりに食いしんぼ(鳴らすのがたいへん)かと予想していましたが、これならAVアンプでも十分鳴ってくれるのではないかと思います。
ピアノソロからオーケストラが加わる下りのダイナミックレンジが素晴らしく、ピークでのシンバルや金管のアクセントも鮮やか。地を這うような低音の伸びは大型フロアスピーカーに及びませんが、ブルンという弦の震えや広がりなどは誇張感が一切なく、作品の持つ情緒的なニュアンスをきちんと伝えてきます。
“Studio”というネーミングから、生真面目で素っ気ない印象を想像されるかも知れませんが、「Studio 89」の鳴り方は、かなり情緒的です。ファントム音像がビシッとセンター定位するというよりも、広がりがあってゴージャスなイメージ。ピアノフィニッシュにゴールドをあしらった見た目通りのサウンドです。難しい顔して腕組みするよりも、リビングに置いてリラックスしていい芸術作品に浸る・・・そんなタイプです。
■[音楽再生2]80〜90年代ハスキーなヴォーカルとギターの音色が鳥肌もの!
ところで、この「Studio 89」のリリースを読むと、MTVが流行った1980年代にインスピレーションを得たとのこと。
たしかにこの時代の音は、初代「Studio」が目指していたハイレゾ広帯域というよりも、CD出たての中低域厚めでちょっとスピード感ある音作りがトレンドだった印象があります。
そこで、まさにMTV時代のa-ha「Take On Me」(85年)をチョイス。すると、見事に当時のCDっぽい音がするじゃあないですか!シンセの打ち込みも微妙にアナログっぽさを残しつつ、中低域に芯があり、高域のシャキシャキした感じも「リマスター盤」とは違い、耳あたりのいいスピード感で楽しめます。「Studio 89」は、アクセントは表現しながらも、耳に付く高音域が一切出ないのです。
つづいて、Arcadia「Election Day」(85年)。Duran Duranのメンバーによるサイドプロジェクトですが、これにもニンマリ。ベースラインがもっこりしてハイはシャカシャカで、終盤のサックスがブリブリと逞しく鳴りながらフェードアウト・・・。こんなにワイルドで挑戦的だったっけ?と、曲の魅力を再確認しました。
次に女性バンドBANGLES「Manic Monday」(85年)。Princeの名曲の一つですが、これもしっかりした中低域にSusanna Hoffsの独特のヴォーカルが前に張り出してきて、とても新鮮。JBLのようなアメリカンな張り出し方、明るくてクッキリ縁取っている感じとはちょっと違います。色ツヤが華美でないのに、どこかチャーミングで飽きが来ません。
じゃあということで、これ見よがしに艶っぽい曲を。Bobby Caldwell「Heart of Mine」(89年)。ああなるほど、余分なエコーが取り去られたような素朴な味わいです。甘すぎないこの無味無臭な感じこそ、“Studio”の意味かも知れません。それでいて、平面振動板トゥイーターならではの高音域がワイドに拡散する心地よさが、遺憾なく発揮されています。このモデルの特徴をいちばん出してくれる一曲です。
「Listen Again」の意味するところは、こんなところにあるのかも知れません。
■[音楽再生3]最新曲も上手く捌く!
次にLINN SELEKT DSM-Kの入力をUSBに切り替え、Macbook Air(2022、M2)を接続。Apple Musicで最新曲を再生してみます。

J-POPのBUMP OF CHICKEN「Sleep Walking Orchestra」。かなり分厚い低音が入っていますが、全体を籠もらせることなく、たいせつな藤原のヴォーカルを明瞭に前に張り出させます。冒頭の音場がリアに少し回り込むかのようなアレンジも無難に処理しています。
K-POPガールズグループfromis_9「Supersonic」。打ち込みの重低音とチャカチャカ細かいアレンジにセクシーな女声という、洋楽にもありがちなこういった構成も、今風にバランス良く聴かせるのはさすがです。

ともするとドンシャリになりがちな最新曲も、低音域控えめ、かつ高音域が耳に付かないので、とても聴きやすい。現代POPSメインの人にも実は凄くオススメだと思いました。
「Listen Again」を「ハイレゾ云々じゃなく、改めて音楽を聴く姿勢」と捉えることも出来るかも知れません。
■[映画再生]奥行きも出るので120インチ大画面とも馴染む
次に120インチのPJ映像と釣り合うか検証しましょう。スクリーン両袖にスタンド設置して映画を鑑賞します。UHD Blu-rayプレーヤーはマグネターUDP800、AVセンターはヤマハCX-A5200、プリメインアンプPOWER1 MK3をパススルーしてパワーアンプとして使います。

4K BD『トップガン マーヴェリック』では、サイズを感じさせない広がりと再生帯域に驚かされます。先述したように、大型フロアスピーカーのような地を這う重低音の伸びはないのですが、作品の効果として必要な低音はきちんと再生されているのだと分かりました。冒頭の戦闘機のタッチ&ゴーのエンジン音のスピード感、カチャっという金属メカ音の切れ味は、アクション映画向きでもあります。とてもこの小さなスピーカーから鳴っているとは思えません。
一方、マーヴェリックがDarkstarを墜落させたあと上官ケインに呼び出されるシークエンスでは、マーヴェリックの心情を表現するかのような時計のコチコチ音まできちんと描写。スタジオモニターらしい性格が顔を出します。
Amy Winehouseの生涯を描いたBD『BACK TO BLACK』。エイミーがライブハウスでようやく結婚できたBlakeに視線を向けながら「(There Is)No Greater Love」を歌うシークエンスでは、CD収録の原曲のよりも幸せの感情に溢れ愛を語りかけているのですが、「Studio 89」で聴くと、ベッド上の二人のような濃密な歌声とプライベート感満載の響きの少ないホール感をよく再現しています。一方、Blakeが麻薬で捕まり屋外ライブで「Me & Mr.Jones」を「Me & Blake」に替え歌して歌うシークエンスでは、キレ気味にシャウトするエイミーの声、Blakeを非難する観衆のヤジ、屋外ライブならではのだぶついた不明瞭な低音を再現。Blakeと歌を共有したいだけのエイミーと、日々パパラッチに追われ世間の好奇にさらされるゴシップの対象としての彼女のコントラストをよく描き分けています。
「Studio 89」は、エイミーのざらついたヴォーカルを掘り起こすというよりも、むしろ小さなブックシェルフにもかかわらず音場の表現にすぐれており、シーン毎のニュアンスを豊かに再現することに主眼が置かれた再生音です。再起しようとするエイミーの孤独と、それを永遠に支えようとした父の物語であることを深く印象づけます。
■純正スタンドの使いこなし
純正スタンドは、スピーカー本体とネジ止め固定する仕様になっており、付属の六角レンチで締め上げます。金属製と思われますが、柱部分は中空のようなので何かしら充填するのがよさそう。ちなみに初代PL100のスタンドには高粘度のゴム状のモノが制振材として貼り込まれていました。

そのままゴム脚でも配置可能

スパイクは付属していますが、スパイク受けはないため、準備する必要があります。ここでは、ふだん拙宅で使っているアドバンスド・ハイカーボン鋳鉄のTAOC「PTS-A」を咬ましてみます。
ピタリ地に足がついたように雑音が消え、静かになりつつ色づけもない、ふだんのこのインシュレーターの印象通り。「Studio 89」では、スパイクを履かないゴム足に比べ、オーケストラではややスケール感は減退するものの、ブルンという弦の響きや定位がぐんと繊細になります。
ロック&POPSでは中低域の切れが良くなり解像度も向上、平面振動板らしい繊細なレスポンスがより露わになります。逆にいうと、ブックシェルフのスタジオモニターっぽい方向に振れます。

ちなみに、メーカーHPのイメージカットにもある「家具直載せ」も試してみましたが、スケール感が失われなんだか籠もってしまい、「Studio 89」の良さが消えて薄暗ーくなってしまいます。これまで聞いてきたどのブックシェルフスピーカーでも、こんなに劣化することはないのですが・・・。どうしても家具置きしたいなら、見栄えはよくありませんが、直置きではなくインシュレーターを咬ますなどの工夫が必要でしょう。
なお、この場合、スタンドと接続する穴とスパイクの穴は径が異なります。また、仮に径が合うスパイクを履かせたとしても穴の位置が写真の通りで不安定なので、家具直置きにスパイクを履かせるのは無理がありそうです。
拙宅に届いた「Studio 89」の外箱には、「Listen Again」の意味深な文字が。何を意味するのか念頭に置きながら聴いていきましょう。
さきにレビューしたECLIPSE「TD508MK4」と同様に、コンパクトなブックシェルフシステムですが、専用スタンドに据え付けて聴いていきます。駆動するアンプは独Accustic ArtsプリメインアンプPOWER1 MK3です。
まず、LINNのネットワークプレーヤーSELEKT DSM-Kで、拙宅NAS内のファイル再生をします。
ピアニストで作曲家のアルベルト・ギノバルトの自作自演協奏曲第1番を選びます。美しいピアノのソロと、オーケストラが加わったときのスケール感のコントラストが聴き所です。
まず驚いたのは、ボリュウムをさほど上げなくても十分な音量を得られること。コンパクトなのでそれなりに食いしんぼ(鳴らすのがたいへん)かと予想していましたが、これならAVアンプでも十分鳴ってくれるのではないかと思います。
ピアノソロからオーケストラが加わる下りのダイナミックレンジが素晴らしく、ピークでのシンバルや金管のアクセントも鮮やか。地を這うような低音の伸びは大型フロアスピーカーに及びませんが、ブルンという弦の震えや広がりなどは誇張感が一切なく、作品の持つ情緒的なニュアンスをきちんと伝えてきます。
“Studio”というネーミングから、生真面目で素っ気ない印象を想像されるかも知れませんが、「Studio 89」の鳴り方は、かなり情緒的です。ファントム音像がビシッとセンター定位するというよりも、広がりがあってゴージャスなイメージ。ピアノフィニッシュにゴールドをあしらった見た目通りのサウンドです。難しい顔して腕組みするよりも、リビングに置いてリラックスしていい芸術作品に浸る・・・そんなタイプです。
■[音楽再生2]80〜90年代ハスキーなヴォーカルとギターの音色が鳥肌もの!
ところで、この「Studio 89」のリリースを読むと、MTVが流行った1980年代にインスピレーションを得たとのこと。
たしかにこの時代の音は、初代「Studio」が目指していたハイレゾ広帯域というよりも、CD出たての中低域厚めでちょっとスピード感ある音作りがトレンドだった印象があります。
そこで、まさにMTV時代のa-ha「Take On Me」(85年)をチョイス。すると、見事に当時のCDっぽい音がするじゃあないですか!シンセの打ち込みも微妙にアナログっぽさを残しつつ、中低域に芯があり、高域のシャキシャキした感じも「リマスター盤」とは違い、耳あたりのいいスピード感で楽しめます。「Studio 89」は、アクセントは表現しながらも、耳に付く高音域が一切出ないのです。
つづいて、Arcadia「Election Day」(85年)。Duran Duranのメンバーによるサイドプロジェクトですが、これにもニンマリ。ベースラインがもっこりしてハイはシャカシャカで、終盤のサックスがブリブリと逞しく鳴りながらフェードアウト・・・。こんなにワイルドで挑戦的だったっけ?と、曲の魅力を再確認しました。
次に女性バンドBANGLES「Manic Monday」(85年)。Princeの名曲の一つですが、これもしっかりした中低域にSusanna Hoffsの独特のヴォーカルが前に張り出してきて、とても新鮮。JBLのようなアメリカンな張り出し方、明るくてクッキリ縁取っている感じとはちょっと違います。色ツヤが華美でないのに、どこかチャーミングで飽きが来ません。
じゃあということで、これ見よがしに艶っぽい曲を。Bobby Caldwell「Heart of Mine」(89年)。ああなるほど、余分なエコーが取り去られたような素朴な味わいです。甘すぎないこの無味無臭な感じこそ、“Studio”の意味かも知れません。それでいて、平面振動板トゥイーターならではの高音域がワイドに拡散する心地よさが、遺憾なく発揮されています。このモデルの特徴をいちばん出してくれる一曲です。
「Listen Again」の意味するところは、こんなところにあるのかも知れません。
■[音楽再生3]最新曲も上手く捌く!
次にLINN SELEKT DSM-Kの入力をUSBに切り替え、Macbook Air(2022、M2)を接続。Apple Musicで最新曲を再生してみます。
J-POPのBUMP OF CHICKEN「Sleep Walking Orchestra」。かなり分厚い低音が入っていますが、全体を籠もらせることなく、たいせつな藤原のヴォーカルを明瞭に前に張り出させます。冒頭の音場がリアに少し回り込むかのようなアレンジも無難に処理しています。
K-POPガールズグループfromis_9「Supersonic」。打ち込みの重低音とチャカチャカ細かいアレンジにセクシーな女声という、洋楽にもありがちなこういった構成も、今風にバランス良く聴かせるのはさすがです。
ともするとドンシャリになりがちな最新曲も、低音域控えめ、かつ高音域が耳に付かないので、とても聴きやすい。現代POPSメインの人にも実は凄くオススメだと思いました。
「Listen Again」を「ハイレゾ云々じゃなく、改めて音楽を聴く姿勢」と捉えることも出来るかも知れません。
■[映画再生]奥行きも出るので120インチ大画面とも馴染む
次に120インチのPJ映像と釣り合うか検証しましょう。スクリーン両袖にスタンド設置して映画を鑑賞します。UHD Blu-rayプレーヤーはマグネターUDP800、AVセンターはヤマハCX-A5200、プリメインアンプPOWER1 MK3をパススルーしてパワーアンプとして使います。
4K BD『トップガン マーヴェリック』では、サイズを感じさせない広がりと再生帯域に驚かされます。先述したように、大型フロアスピーカーのような地を這う重低音の伸びはないのですが、作品の効果として必要な低音はきちんと再生されているのだと分かりました。冒頭の戦闘機のタッチ&ゴーのエンジン音のスピード感、カチャっという金属メカ音の切れ味は、アクション映画向きでもあります。とてもこの小さなスピーカーから鳴っているとは思えません。
一方、マーヴェリックがDarkstarを墜落させたあと上官ケインに呼び出されるシークエンスでは、マーヴェリックの心情を表現するかのような時計のコチコチ音まできちんと描写。スタジオモニターらしい性格が顔を出します。
Amy Winehouseの生涯を描いたBD『BACK TO BLACK』。エイミーがライブハウスでようやく結婚できたBlakeに視線を向けながら「(There Is)No Greater Love」を歌うシークエンスでは、CD収録の原曲のよりも幸せの感情に溢れ愛を語りかけているのですが、「Studio 89」で聴くと、ベッド上の二人のような濃密な歌声とプライベート感満載の響きの少ないホール感をよく再現しています。一方、Blakeが麻薬で捕まり屋外ライブで「Me & Mr.Jones」を「Me & Blake」に替え歌して歌うシークエンスでは、キレ気味にシャウトするエイミーの声、Blakeを非難する観衆のヤジ、屋外ライブならではのだぶついた不明瞭な低音を再現。Blakeと歌を共有したいだけのエイミーと、日々パパラッチに追われ世間の好奇にさらされるゴシップの対象としての彼女のコントラストをよく描き分けています。
「Studio 89」は、エイミーのざらついたヴォーカルを掘り起こすというよりも、むしろ小さなブックシェルフにもかかわらず音場の表現にすぐれており、シーン毎のニュアンスを豊かに再現することに主眼が置かれた再生音です。再起しようとするエイミーの孤独と、それを永遠に支えようとした父の物語であることを深く印象づけます。
■純正スタンドの使いこなし
純正スタンドは、スピーカー本体とネジ止め固定する仕様になっており、付属の六角レンチで締め上げます。金属製と思われますが、柱部分は中空のようなので何かしら充填するのがよさそう。ちなみに初代PL100のスタンドには高粘度のゴム状のモノが制振材として貼り込まれていました。
そのままゴム脚でも配置可能
スパイクは付属していますが、スパイク受けはないため、準備する必要があります。ここでは、ふだん拙宅で使っているアドバンスド・ハイカーボン鋳鉄のTAOC「PTS-A」を咬ましてみます。
ピタリ地に足がついたように雑音が消え、静かになりつつ色づけもない、ふだんのこのインシュレーターの印象通り。「Studio 89」では、スパイクを履かないゴム足に比べ、オーケストラではややスケール感は減退するものの、ブルンという弦の響きや定位がぐんと繊細になります。
ロック&POPSでは中低域の切れが良くなり解像度も向上、平面振動板らしい繊細なレスポンスがより露わになります。逆にいうと、ブックシェルフのスタジオモニターっぽい方向に振れます。
ちなみに、メーカーHPのイメージカットにもある「家具直載せ」も試してみましたが、スケール感が失われなんだか籠もってしまい、「Studio 89」の良さが消えて薄暗ーくなってしまいます。これまで聞いてきたどのブックシェルフスピーカーでも、こんなに劣化することはないのですが・・・。どうしても家具置きしたいなら、見栄えはよくありませんが、直置きではなくインシュレーターを咬ますなどの工夫が必要でしょう。
なお、この場合、スタンドと接続する穴とスパイクの穴は径が異なります。また、仮に径が合うスパイクを履かせたとしても穴の位置が写真の通りで不安定なので、家具直置きにスパイクを履かせるのは無理がありそうです。
■[まとめ] 「Listen Again」リビングで、最新POPSから映画までスケール豊かに
第一に特徴的なのは、CD二枚ほどのフロントバッフルのコンパクトサイズで、驚きのスケール感を醸し出すこと。80〜90年代のロック&POPSが豊かだった時代のオーディオを思い起こさせる中低域の充実した張り出しとともに、記号的ドンシャリ逞しい最新のデジタル音源も上手にバランス良く処理して耳に付くことなく再生してくれます。
それでいて、音色はあくまでナチュラルかつ落ち着いたユーロトーン。アメリカっぽいハレ系のノリや、華やかな艶が載ったりすることもなく、まさに“Studio”無色透明です。
映画再生にも向いており、各場面に必要なスケール感や、ドラマのニュアンスの表現も、2chとは思えないほど情緒たっぷりです。
アンプへの負荷も少なくとても鳴らし易いので、リビングに置いて、最新POPSや映画を縦横無尽に楽しんでほしいと思わせる、隠れた逸品。「Studio 89」で「Listen Again」しませんか。
第一に特徴的なのは、CD二枚ほどのフロントバッフルのコンパクトサイズで、驚きのスケール感を醸し出すこと。80〜90年代のロック&POPSが豊かだった時代のオーディオを思い起こさせる中低域の充実した張り出しとともに、記号的ドンシャリ逞しい最新のデジタル音源も上手にバランス良く処理して耳に付くことなく再生してくれます。
それでいて、音色はあくまでナチュラルかつ落ち着いたユーロトーン。アメリカっぽいハレ系のノリや、華やかな艶が載ったりすることもなく、まさに“Studio”無色透明です。
映画再生にも向いており、各場面に必要なスケール感や、ドラマのニュアンスの表現も、2chとは思えないほど情緒たっぷりです。
アンプへの負荷も少なくとても鳴らし易いので、リビングに置いて、最新POPSや映画を縦横無尽に楽しんでほしいと思わせる、隠れた逸品。「Studio 89」で「Listen Again」しませんか。
Studio 89 MONITOR AUDIO [モニターオーディオ] ブックシェルフスピーカー [ペア] 下取り査定額20%アップ実施中!
¥346,500
税込
商品コード: STUDIO89
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