[自宅レビュー!]
強烈な定位感に、艶やかな音色と中低域の奥行きが加わる
デスクトップ唯一無二の存在に成熟
ECLIPSE「TD508MK4」
覆面レビュワー「ラビットBW」です。今回も消費者目線で忖度なしに「白黒」判定すべく、自宅リポートします。
今回は、待ってましたのイクリプスの卵形最新バージョン「TD508MK4」がやってきました。ホームシアターのアバックとしては、イマーシブオーディオ用天井埋め込みスピーカーの代わりに、吊り下げや壁かけでインストールする例が多く、同社のサブウーファーと組み合わせたマルチチャンネル再生の印象が強いところ。でも今回は、敢えて“ニアフィールドリスニング”もといデスクトップミュージックシステムとして、じっくり向き合ってみます。
[特徴]
●「TD508MK4」のポイント
・グラスファイバー8cmフルレンジのベストセラー「TD508」の最新モデル
・デスクトップに最適サイズ&価格も手頃
・ユニットから新設計。インパルス性能&再姿勢周波数帯域のバランス向上
●実際使ってみたら凄かった!
・スピード感、切れ味、繊細さは変わらず
・素っ気ないと思っていた音色が、艶やかに一変
・フルレンジながら中低域も過不足なくこなすように
■デザイン
TD508MK4は、イクリプスおなじみのエッグシェル型。8cmフルレンジユニットの裏側にバスレフポートがあり、端子もすこし抉れたこの場所に設けられています。
端子もしっかりしたバナナもラグも差しやすい大型のノブが付いたもの。
機構的には、今回新たに手回しノブで調整できるようになったのが地味に嬉しいところ。カメラで三脚を使う方なら分かると思いますが、自由雲台のよう。
8cmフルレンジユニット
ラグががっちり留められバナナも差せるスピーカー端子
バスレフポートはやや大きめ
手回しでも調整できる角度調整ダイヤル
デスクトップ使用時は、−20度からプラス35度
斜めに角度調整も可能
■音楽再生 ヘッドホンの如きダイレクト感。音楽的要素が聞き取りやすい
今回は、コンパクトはデスクトップシステムを念頭に聴こうという趣旨なので、拙宅の民芸家具のヴィンテージ机にこの「TD508MK4」を据え、前回試聴して良好だったマランツのHDMI付きストリーミングアンプ「MODEL M1」で鳴らします。MODEL M1はコンパクトながら“BTLらしい”パワフルな駆動力が魅力のクラスDアンプで、デジタルフィルターは俊敏な「フィルター1」を選択。
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■8cmフルレンジなのに、ピアノソロからオーケストラまで艶やかにこなす
拙宅NAS内のファイル再生をします。ピアニストで作曲家のアルベルト・ギノバルトの自作自演協奏曲第一番を選びます。
実は個人的には、これまでECLIPSEに対して私が抱いていたイメージは、よく言えば高忠実、裏を返せばちょっとドライで素っ気ないタッチの音でした。ところが「TD508MK4」では、甘い響きのピアノソロからはじまる出鼻からしてなかなかに音楽的。滑らかで、むしろ煌びやかな魅力にあふれているのです。
そんなチャーミングなピアノソロに、サンクト・ペテルブルク国立アカデミー交響楽団のオーケストラが加わると、途端に音場がグーンと奥行き方向に広がり、壮大なスケールの音場に一変します。
改めて、ECLIPSEが正確な位相再現性による音色と音場感「命」の製品であること、そして、記憶として持っていたちょっと素っ気ないドライなイメージを改めました。
■ハスキーなヴォーカルとギターの音色が鳥肌もの!
ここでふと「TD508MK4でアレを聴いたら凄そう」だなと思い立ったのが、アコースティックギターとヴォーカル「命」のアラニス・モリセット。案の定、アルバム「Jagged Littele Pill」を再生すると、これが鳥肌もの。ちょっとハスキーな女声とアコギ、繊細なアレンジが詳らかに分かります。
とくに『Ironic(皮肉)』。冒頭ギターとヴォーカルを左右に分けて世の「皮肉な出来事」を並べ立て歌詞に注目させたあと、ジャーンと両者が混ざり合い一気にロック調になると、歌詞もさらに痛烈な皮肉に。そのあと「まあそうは言ってもね」と思い直したように転調するフレーズでは、怒りを吐き出し気が済んだようなリラックスしたエア感を醸し出します。
そしてラスト「人生って面白いよね」で鮮やかに締めくくるられるのですが、左右に分かれて登場する一連のギターやアレンジの音色と、その間に浮かび上がる女声が示す感情の起伏、緊張と解放というトーンの起伏が、他のスピーカーではなかなか得られない、解釈力と表現力なのです。「フルレンジの魅力」といえばひと言ですが、フォステクスのようなフルレンジとはまた違ったサウンドステージの描き方が魅力と言えるでしょう。
ハスキーな女声とギターつながりでいえば、エイミー・グラントも合います。やはり左右のアコギ、とくに『Beautiful』では、男声コーラスやピアノも含めてアコースティックライブ感が横溢。
ちなみに、『Baby Baby』に「Heart In Motion Mix」というクラブ調だかレゲエ調だかよくわからないリミックスバージョンがあるのですが、ぐるぐるとめちゃくちゃに音を回して位相をいじり回しているミキシングのありようが、「TD508MK4」の正確な位相再現力によってあからさまとなり、はじめて一曲まるごと楽しく聴くことができました。
そしてBABYMETAL。もちろんもう少し低音が量として出てほしいというのはありながらも、バチバチ刻むリズムと速弾きギターのメロディライン、ヴォーカルの立ち位置が明確。SNがいいこともあり、決してうるさくならず、むしろ情報が整理されて音楽的要素が聴き取りやすいともいえます。とくに情報量がとにかく多い『Catch me if you can』では、抜群の移動感と熱量が目に見えるかのようです。
■このスピーカーでマスタリングしたの?
最近のPOPSを聴いてみましょう。
Apple MusicでK-POPを聴くと、これが抜群にバランスがいいんです。Kiss of Life『Sticky』、ILLIT『Magnetic』、H1-KEY『Let it Burn』、VIVIZ『MANIAC』・・・みんなこのセットでマスタリングしてるのか?と勘ぐりたくなるほどウェルバランス。しかも、スピーカーは耳から僅か80cmほどの距離にあるのに、その奥にあるスピーカーから出ているのかと錯覚するほど音場が深いんです。


J-POPも、BUMP OF CHICKEN『Sleeo Walking Orchestra』、XG『PUPPET SHOW』あたりが良好。マスタリングの善し悪しが如実に出てしまうのも、「TD508MK4」の特徴です。
おもわずマスタリングエンジニアにでもなったかのように、分析的に音を聴いてしまう愉しさ。PAのようにボリュウムを上げてガンガン鳴らすことに快感を覚えるユーザーよりも、BGMかと思うほどにボリュウムを絞ってキチンと各楽器の音色や配置、ステージの奥行き感までが詳かに“聴き取りたい”ユーザーに最適な製品です。今回組み合わせたマランツ「MODEL M1」のような、駆動力に優れ、SNもいいアンプでドライブするのがベストだと考えます。
■奥行きも出るので120インチ大画面とも馴染む
次に、120インチのPJ映像と釣り合うかを検証しましょう。
このとき、2つのスピーカーを120インチのスクリーン前の左右に配置すると、ここまで聴いてきた“ニアフィールド”の良さが薄れてしまいます。もちろん、正確な位相で放たれた音は、部屋の離れた位置でもいい音として伝わりますが、せっかくなので正確に聞き取りたいところ。そこで、画面に対して60度の正三角形を保ったまま、机上の“リアル・ニアフィールド”に置くことを提案します。「TD508MK4」は奥行き感もひじょうに出るモデルなので、このような置き方をしても画面とよく馴染みます。

リビングシアターとしてスクリーン下に置くのもいいが・・・


スピーカーはデスクトップ、画面は奥に設置する。なんてスピーカーありきなセッティングもオススメ
4K BD『トップガン マーヴェリック』では、冒頭おなじみの打ち込みサウンドに乗せたテロップからタイトル大映し、そこからのタッチ&ゴーのシーケンスは、サブウーファーなしの大音量でなくても、鮮やかで切れ味がよく、臨場感たっぷりです。なぜなら、正確な位相再現性により、左右及び奥行きの方向感、メカの機械音や戦闘機の風切り音などが恐ろしくリアルだから。位相があまりにもシビアすぎて、頭の位置や両耳の正しい角度を常時探りながら鑑賞してしまうほどです。
こんな小さなタマゴでありながら、Darkstarが夜空に一筋の航跡を描くファンタスティックな場面での広い空間表現は、他のスピーカーでは得られないものです。
4K BDトーキング・ヘッズ『STOP MAKING SENSE』。いろいろいじくりすぎてちょっと逆相っぽくなってしまうところが間々ある「1984 Original Stereo Mix」ヴァージョンと、きちんと聴けるように直された「2023 ATMOS MIX」ヴァージョンの違いが、「TD508MK4」ではほんとうによく分かります。「2023 ATMOS MIX」ヴァージョンでこの作品を観ると、ほんとうに2023年に行われた最新のライブ映像のよう。『STOP MAKING SENSE』が4K映像化されたことよりも、素晴らしいサウンドミックスに万歳しました。
■まとめ サブウーファー不要!デスクトップミュージック&シアターに唯一無二
「TD508MK4」は、それまで私が持っていた「精確なんだけどなんだか素っ気ない」というイメージを完全に払拭してくれました。もちろんフルレンジ故のたっぷりした低音は望めません。しかし、MK4になって過不足ない印象ですし、サブウーファーを下手に追加して位相を乱したくありません。そしてMK4で加わった艶やかな音色、もともと持っている切れ味は、他のスピーカーでは絶対に得られない唯一無二の世界観なのです。“ニアフィールドならではの快感”を求めるなら、第一候補にしたいほど魅力的なモデルに成熟しています。
「TD508MK4」は、ホームシアターの天吊り、壁掛けユースだけでなく、ヘッドホン体験を“超える”ニアフィールドリスニングと大画面で、贅沢なシアター体験をするのにももってこいです。
ここでふと「TD508MK4でアレを聴いたら凄そう」だなと思い立ったのが、アコースティックギターとヴォーカル「命」のアラニス・モリセット。案の定、アルバム「Jagged Littele Pill」を再生すると、これが鳥肌もの。ちょっとハスキーな女声とアコギ、繊細なアレンジが詳らかに分かります。
とくに『Ironic(皮肉)』。冒頭ギターとヴォーカルを左右に分けて世の「皮肉な出来事」を並べ立て歌詞に注目させたあと、ジャーンと両者が混ざり合い一気にロック調になると、歌詞もさらに痛烈な皮肉に。そのあと「まあそうは言ってもね」と思い直したように転調するフレーズでは、怒りを吐き出し気が済んだようなリラックスしたエア感を醸し出します。
そしてラスト「人生って面白いよね」で鮮やかに締めくくるられるのですが、左右に分かれて登場する一連のギターやアレンジの音色と、その間に浮かび上がる女声が示す感情の起伏、緊張と解放というトーンの起伏が、他のスピーカーではなかなか得られない、解釈力と表現力なのです。「フルレンジの魅力」といえばひと言ですが、フォステクスのようなフルレンジとはまた違ったサウンドステージの描き方が魅力と言えるでしょう。
ハスキーな女声とギターつながりでいえば、エイミー・グラントも合います。やはり左右のアコギ、とくに『Beautiful』では、男声コーラスやピアノも含めてアコースティックライブ感が横溢。
ちなみに、『Baby Baby』に「Heart In Motion Mix」というクラブ調だかレゲエ調だかよくわからないリミックスバージョンがあるのですが、ぐるぐるとめちゃくちゃに音を回して位相をいじり回しているミキシングのありようが、「TD508MK4」の正確な位相再現力によってあからさまとなり、はじめて一曲まるごと楽しく聴くことができました。
そしてBABYMETAL。もちろんもう少し低音が量として出てほしいというのはありながらも、バチバチ刻むリズムと速弾きギターのメロディライン、ヴォーカルの立ち位置が明確。SNがいいこともあり、決してうるさくならず、むしろ情報が整理されて音楽的要素が聴き取りやすいともいえます。とくに情報量がとにかく多い『Catch me if you can』では、抜群の移動感と熱量が目に見えるかのようです。
■このスピーカーでマスタリングしたの?
最近のPOPSを聴いてみましょう。
Apple MusicでK-POPを聴くと、これが抜群にバランスがいいんです。Kiss of Life『Sticky』、ILLIT『Magnetic』、H1-KEY『Let it Burn』、VIVIZ『MANIAC』・・・みんなこのセットでマスタリングしてるのか?と勘ぐりたくなるほどウェルバランス。しかも、スピーカーは耳から僅か80cmほどの距離にあるのに、その奥にあるスピーカーから出ているのかと錯覚するほど音場が深いんです。
J-POPも、BUMP OF CHICKEN『Sleeo Walking Orchestra』、XG『PUPPET SHOW』あたりが良好。マスタリングの善し悪しが如実に出てしまうのも、「TD508MK4」の特徴です。
おもわずマスタリングエンジニアにでもなったかのように、分析的に音を聴いてしまう愉しさ。PAのようにボリュウムを上げてガンガン鳴らすことに快感を覚えるユーザーよりも、BGMかと思うほどにボリュウムを絞ってキチンと各楽器の音色や配置、ステージの奥行き感までが詳かに“聴き取りたい”ユーザーに最適な製品です。今回組み合わせたマランツ「MODEL M1」のような、駆動力に優れ、SNもいいアンプでドライブするのがベストだと考えます。
■奥行きも出るので120インチ大画面とも馴染む
次に、120インチのPJ映像と釣り合うかを検証しましょう。
このとき、2つのスピーカーを120インチのスクリーン前の左右に配置すると、ここまで聴いてきた“ニアフィールド”の良さが薄れてしまいます。もちろん、正確な位相で放たれた音は、部屋の離れた位置でもいい音として伝わりますが、せっかくなので正確に聞き取りたいところ。そこで、画面に対して60度の正三角形を保ったまま、机上の“リアル・ニアフィールド”に置くことを提案します。「TD508MK4」は奥行き感もひじょうに出るモデルなので、このような置き方をしても画面とよく馴染みます。
リビングシアターとしてスクリーン下に置くのもいいが・・・
スピーカーはデスクトップ、画面は奥に設置する。なんてスピーカーありきなセッティングもオススメ
4K BD『トップガン マーヴェリック』では、冒頭おなじみの打ち込みサウンドに乗せたテロップからタイトル大映し、そこからのタッチ&ゴーのシーケンスは、サブウーファーなしの大音量でなくても、鮮やかで切れ味がよく、臨場感たっぷりです。なぜなら、正確な位相再現性により、左右及び奥行きの方向感、メカの機械音や戦闘機の風切り音などが恐ろしくリアルだから。位相があまりにもシビアすぎて、頭の位置や両耳の正しい角度を常時探りながら鑑賞してしまうほどです。
こんな小さなタマゴでありながら、Darkstarが夜空に一筋の航跡を描くファンタスティックな場面での広い空間表現は、他のスピーカーでは得られないものです。
4K BDトーキング・ヘッズ『STOP MAKING SENSE』。いろいろいじくりすぎてちょっと逆相っぽくなってしまうところが間々ある「1984 Original Stereo Mix」ヴァージョンと、きちんと聴けるように直された「2023 ATMOS MIX」ヴァージョンの違いが、「TD508MK4」ではほんとうによく分かります。「2023 ATMOS MIX」ヴァージョンでこの作品を観ると、ほんとうに2023年に行われた最新のライブ映像のよう。『STOP MAKING SENSE』が4K映像化されたことよりも、素晴らしいサウンドミックスに万歳しました。
■まとめ サブウーファー不要!デスクトップミュージック&シアターに唯一無二
「TD508MK4」は、それまで私が持っていた「精確なんだけどなんだか素っ気ない」というイメージを完全に払拭してくれました。もちろんフルレンジ故のたっぷりした低音は望めません。しかし、MK4になって過不足ない印象ですし、サブウーファーを下手に追加して位相を乱したくありません。そしてMK4で加わった艶やかな音色、もともと持っている切れ味は、他のスピーカーでは絶対に得られない唯一無二の世界観なのです。“ニアフィールドならではの快感”を求めるなら、第一候補にしたいほど魅力的なモデルに成熟しています。
「TD508MK4」は、ホームシアターの天吊り、壁掛けユースだけでなく、ヘッドホン体験を“超える”ニアフィールドリスニングと大画面で、贅沢なシアター体験をするのにももってこいです。
TD508MK4 [ブラック] ECLIPSE [イクリプス] 8cm口径フルレンジスピーカーシステム [1台] 下取り査定額20%アップ実施中!
¥67,320
税込
商品コード: TD508MK4BK
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