Fiio K19[後編]バランスヘッドホンDAC編
家族が寝たらバランスヘッドホンでお一人様ハイエンドシアター!
映画や音楽を好みのEQで弄り倒す
覆面レビュワー「ラビットBW」です。今回も消費者目線で忖度なしに「白黒」判定すべくリポートします。
今回も前回に引き続き、5月末新発売のFiiO(フィーオ)Electronics「K19」です。前回はライン出力でのDACプリとしての使いこなしを楽しみましたが、今回はバランスヘッドホンDACとしての実力をチェックします。
[特徴]
●製品のポイント
・ESSのフラグシップDAC「ES9039SPRO」を2基搭載
・新開発高出力ヘッドホンアンプ回路を搭載
・アナデバ「SHARC+コア」31バンドの高精度ロスレスPEQ機能
・超低位相雑音クロックジェネレーター2基
・HDMI端子、アナログXLR出力など豊富な端子
●こんな人にオススメ
・小さくて高性能なDACが欲しい
・マニアックなEQ弄りがしてみたい
・アクティブスピーカー、ヘッドホンが中心
・HDMIやUSB-C端子が欲しい
■最新バランス接続ヘッドホンにカスタムEQ適用で、脳がバグりまくり!
「K19」レビュー後半戦は、ヘッドホンDACとしての実力を探ります。「K19」はブルートゥースも高品位ですが、せっかくバランスヘッドホン出力を持っているので有線接続を使います。
以下のインプレッションは基本的にEQ「OFF」ですが、「K19レビュー前半」で駆使したようにEQを入れると、ヘッドホンなのでスピーカーで試した特徴がより分かりやすく聴き取れます。
組み合わせたヘッドホンは、フォステクスの新製品2モデル。ハイグレードな「TH808」と、最新の平面振動板を採用した「T50RPmk4」です。入力を同軸デジタルに戻して試聴開始です。

■マルチチャンネル再生のように各場面の空気感を描き分ける
UHD BD「トップガン マーヴェリック」を視聴。

「TH808」(3.5mmプラグ+6.35プラグのアンバランス接続)では、スピーカーで聴いたサウンドに近いものの、セリフがきっちりセンター定位し、男声が隈取られたようにカッチリしています。それでいてオーケストラの劇伴になると、スピーカー再生のようにぐんとサウンドステージが広がります。2ch再生なのに、あたかもマルチchのように各場面での空間の特徴や広さを描き分けます。

「T50RPmk4」(3.5mmプラグ+6.35プラグのアンバランス接続)は、インピーダンスが28Ωとなり、「T50RPmk3」よりぐんと鳴らしやすくなりました。ヴォイシングや音場を精確にモニターしてくれる印象は変わりませんが、よりワイドレンジに、より音場感豊かになったように思います。4.4mmのバランス接続にケーブルに換装すると、これがほんとうに激変し、定位が増してヌケが良くなり、空間の表現力がTH系列のように一気に広がります。航空機の瞬発力、エンジンの爆発音も迫力満点です。
■音楽再生 ファロージャのスケーラーみたいにEQで音を作る楽しみ
次に、宅内NASの音楽ファイルを、ソニーのユニバーサルプレーヤー「UBP-X800M2」を通じてネットワーク再生します。
ピアニストであるアルベルト・ギノバルトの自作自演協奏曲第1番は、「TH808」(アンバランス接続)ではどこまでも優しく、前回のスピーカーでの試聴と同様の印象。空間の表現が豊かで、シルキーなタッチが印象的です。サラウンドスピーカーの代わりに、夜ひとり静かに映像コンテンツを楽しむならうってつけです。
一方の「T50RPmk4」(バランス接続)では、さすがのあら探し用途のモニター気質が顔を出します。「TH808」と比較すると、たとえばスピーカーのアタックなどがヒリヒリするほどリアル。全体的な音場感や雰囲気よりも、各楽器の音に耳が引っ張られます。同じくクラシックで言うと、イツァーク・パールマンのモーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番もウイーン・フィルより、パールマンの彩り豊かなヴァイオリンに集中してしまいます。
音楽愛好家としてゆったりと鑑賞するなら、とくに「T50RPmk4」のようなモニターヘッドホンでは、「K19」のEQ「Classic」を選び、低音域をたっぷりさせつつ管楽器も少し華やかにして、大らかに響かせたいところです。

プリセットでは「Classic」「Jazz」が意外と使える。それ以外はカスタムしたいところ
音楽ライブでは、たとえば「Many Faces of Prince」収録のChaka Khan「I Feel For You」は、正直音質的には微妙ですが、ヘッドホンの違いもよく分かって楽しめます。「TH808」では、観客の歓声とともに、もちろん音階は聴き取れますがある意味もっこもこの低音が、熱気ムンムンな会場の様子を実によく伝えます。一方の「T50RPmk4」は、そんな会場の隅に溜まった低音や歓声はむしろどこかに片付けちゃって、ベースの音階がきっちり聴き取れ、チャカの声も通るが、コーラス隊の声もハッキリ聞こえるように耳を誘導します。
こうして「K19」に慣れてくると、曲毎にEQを掛けたくなります。YES「Roundabout」などは、素で聴いても十分満足できる音質なのに、「Rock」では若干強いにせよ「Jazz」でいいのでEQを入れた方が断然作品のニュアンスが出ます。オーディオメーカーの音質マイスター頼りではなく、「自分の中にある曲のイメージ」を自分で自由に作れるのです。これって、そもそものオーディオの醍醐味そのものではなかったか⁉
ちなみに、Janet Jackson「Control」やMadonna「Material Girl」に、BABYMETALのとき作ったEQ「Custom10」を適用したら、めっちゃキレキレの“リマスターCD”みたいになり、さらにこれをモニターヘッドホン「T50RPmk4」で聴くと、強烈な刺激に脳がバグりまくります笑。伊藤智恵理「トキめきがいたくて」(87年)や大貫妙子「Tema Purissima」(88年)など、低めの音域までカバーする女声ヴォーカルものは、前回レビューで“男声映え”向けに作った「Custom9」を適用すると、キラキラの“デジタルリマスター”風になりました。大貫妙子に至ってはDSDファイルですが、こんな誇張するEQを加えてもまったく破綻しないどころか、ほんとうに最近よくあるリマスター版のようになり、興味深く聴きました。

せっかく「K19」を使ってヘッドホンで聴くなら、絶対これぐらいやるべきです。映像の話ですがその昔、LDやDVD観るのに、DVDOや三菱のVセンターといったスケーラー咬まして飽和すれすれの絵を作って遊んだのを思い出しました。こりゃすげえや。
今回も前回に引き続き、5月末新発売のFiiO(フィーオ)Electronics「K19」です。前回はライン出力でのDACプリとしての使いこなしを楽しみましたが、今回はバランスヘッドホンDACとしての実力をチェックします。
[特徴]
●製品のポイント
・ESSのフラグシップDAC「ES9039SPRO」を2基搭載
・新開発高出力ヘッドホンアンプ回路を搭載
・アナデバ「SHARC+コア」31バンドの高精度ロスレスPEQ機能
・超低位相雑音クロックジェネレーター2基
・HDMI端子、アナログXLR出力など豊富な端子
●こんな人にオススメ
・小さくて高性能なDACが欲しい
・マニアックなEQ弄りがしてみたい
・アクティブスピーカー、ヘッドホンが中心
・HDMIやUSB-C端子が欲しい
■最新バランス接続ヘッドホンにカスタムEQ適用で、脳がバグりまくり!
「K19」レビュー後半戦は、ヘッドホンDACとしての実力を探ります。「K19」はブルートゥースも高品位ですが、せっかくバランスヘッドホン出力を持っているので有線接続を使います。
以下のインプレッションは基本的にEQ「OFF」ですが、「K19レビュー前半」で駆使したようにEQを入れると、ヘッドホンなのでスピーカーで試した特徴がより分かりやすく聴き取れます。
組み合わせたヘッドホンは、フォステクスの新製品2モデル。ハイグレードな「TH808」と、最新の平面振動板を採用した「T50RPmk4」です。入力を同軸デジタルに戻して試聴開始です。
■マルチチャンネル再生のように各場面の空気感を描き分ける
UHD BD「トップガン マーヴェリック」を視聴。
「TH808」(3.5mmプラグ+6.35プラグのアンバランス接続)では、スピーカーで聴いたサウンドに近いものの、セリフがきっちりセンター定位し、男声が隈取られたようにカッチリしています。それでいてオーケストラの劇伴になると、スピーカー再生のようにぐんとサウンドステージが広がります。2ch再生なのに、あたかもマルチchのように各場面での空間の特徴や広さを描き分けます。
「T50RPmk4」(3.5mmプラグ+6.35プラグのアンバランス接続)は、インピーダンスが28Ωとなり、「T50RPmk3」よりぐんと鳴らしやすくなりました。ヴォイシングや音場を精確にモニターしてくれる印象は変わりませんが、よりワイドレンジに、より音場感豊かになったように思います。4.4mmのバランス接続にケーブルに換装すると、これがほんとうに激変し、定位が増してヌケが良くなり、空間の表現力がTH系列のように一気に広がります。航空機の瞬発力、エンジンの爆発音も迫力満点です。
■音楽再生 ファロージャのスケーラーみたいにEQで音を作る楽しみ
次に、宅内NASの音楽ファイルを、ソニーのユニバーサルプレーヤー「UBP-X800M2」を通じてネットワーク再生します。
ピアニストであるアルベルト・ギノバルトの自作自演協奏曲第1番は、「TH808」(アンバランス接続)ではどこまでも優しく、前回のスピーカーでの試聴と同様の印象。空間の表現が豊かで、シルキーなタッチが印象的です。サラウンドスピーカーの代わりに、夜ひとり静かに映像コンテンツを楽しむならうってつけです。
一方の「T50RPmk4」(バランス接続)では、さすがのあら探し用途のモニター気質が顔を出します。「TH808」と比較すると、たとえばスピーカーのアタックなどがヒリヒリするほどリアル。全体的な音場感や雰囲気よりも、各楽器の音に耳が引っ張られます。同じくクラシックで言うと、イツァーク・パールマンのモーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番もウイーン・フィルより、パールマンの彩り豊かなヴァイオリンに集中してしまいます。
音楽愛好家としてゆったりと鑑賞するなら、とくに「T50RPmk4」のようなモニターヘッドホンでは、「K19」のEQ「Classic」を選び、低音域をたっぷりさせつつ管楽器も少し華やかにして、大らかに響かせたいところです。
プリセットでは「Classic」「Jazz」が意外と使える。それ以外はカスタムしたいところ
音楽ライブでは、たとえば「Many Faces of Prince」収録のChaka Khan「I Feel For You」は、正直音質的には微妙ですが、ヘッドホンの違いもよく分かって楽しめます。「TH808」では、観客の歓声とともに、もちろん音階は聴き取れますがある意味もっこもこの低音が、熱気ムンムンな会場の様子を実によく伝えます。一方の「T50RPmk4」は、そんな会場の隅に溜まった低音や歓声はむしろどこかに片付けちゃって、ベースの音階がきっちり聴き取れ、チャカの声も通るが、コーラス隊の声もハッキリ聞こえるように耳を誘導します。
こうして「K19」に慣れてくると、曲毎にEQを掛けたくなります。YES「Roundabout」などは、素で聴いても十分満足できる音質なのに、「Rock」では若干強いにせよ「Jazz」でいいのでEQを入れた方が断然作品のニュアンスが出ます。オーディオメーカーの音質マイスター頼りではなく、「自分の中にある曲のイメージ」を自分で自由に作れるのです。これって、そもそものオーディオの醍醐味そのものではなかったか⁉
ちなみに、Janet Jackson「Control」やMadonna「Material Girl」に、BABYMETALのとき作ったEQ「Custom10」を適用したら、めっちゃキレキレの“リマスターCD”みたいになり、さらにこれをモニターヘッドホン「T50RPmk4」で聴くと、強烈な刺激に脳がバグりまくります笑。伊藤智恵理「トキめきがいたくて」(87年)や大貫妙子「Tema Purissima」(88年)など、低めの音域までカバーする女声ヴォーカルものは、前回レビューで“男声映え”向けに作った「Custom9」を適用すると、キラキラの“デジタルリマスター”風になりました。大貫妙子に至ってはDSDファイルですが、こんな誇張するEQを加えてもまったく破綻しないどころか、ほんとうに最近よくあるリマスター版のようになり、興味深く聴きました。
せっかく「K19」を使ってヘッドホンで聴くなら、絶対これぐらいやるべきです。映像の話ですがその昔、LDやDVD観るのに、DVDOや三菱のVセンターといったスケーラー咬まして飽和すれすれの絵を作って遊んだのを思い出しました。こりゃすげえや。
■デスクトップシアターやお一人様シアターに追加すべき1台
感心するのは、EQを入れてもまったく音質が低下しないこと。自由に遊んで、ここをもっと深掘りして聴きたいという所を自由に掘り起こせるのはとても素晴らしいことです。一度慣れると、EQ「OFF」がなんとも味気なく聴こえるほどです。
日本ではずっと昔からトーンコントロールやEQを入れることを良しとしない風潮があり、「トーンコントロール回路なし」「ピュアオーディオモード」という“切り捨てこそがむしろ売り文句”だったりしました。もちろん先にルームチューニングや基本セッティングありきなのですが、ソースによってはユーザー側でいかんともしがたい“クセ”があり、それが聴き手の中にあるサウンドイメージとマッチしないこともあります。そのたびにヘッドホンを変えるように部屋を変えられるならいいのですが、そうもいきません。ルッキズムの時代に敢えて言うなら、「すっぴんがいい」とはよく言われるものの、あれは実はすっぴん風のメイクをしているから透明感あるように映るのです。
そういった音弄りの魅力にあふれた「K19」。最先端のDAC+バランスヘッドホンアンプとして、サブルームのデスクトップシステムとしてのほか、ホームシアターで大音量が出せない夜のお一人様シアターに追加するのはアリではないでしょうか。
感心するのは、EQを入れてもまったく音質が低下しないこと。自由に遊んで、ここをもっと深掘りして聴きたいという所を自由に掘り起こせるのはとても素晴らしいことです。一度慣れると、EQ「OFF」がなんとも味気なく聴こえるほどです。
日本ではずっと昔からトーンコントロールやEQを入れることを良しとしない風潮があり、「トーンコントロール回路なし」「ピュアオーディオモード」という“切り捨てこそがむしろ売り文句”だったりしました。もちろん先にルームチューニングや基本セッティングありきなのですが、ソースによってはユーザー側でいかんともしがたい“クセ”があり、それが聴き手の中にあるサウンドイメージとマッチしないこともあります。そのたびにヘッドホンを変えるように部屋を変えられるならいいのですが、そうもいきません。ルッキズムの時代に敢えて言うなら、「すっぴんがいい」とはよく言われるものの、あれは実はすっぴん風のメイクをしているから透明感あるように映るのです。
そういった音弄りの魅力にあふれた「K19」。最先端のDAC+バランスヘッドホンアンプとして、サブルームのデスクトップシステムとしてのほか、ホームシアターで大音量が出せない夜のお一人様シアターに追加するのはアリではないでしょうか。
K19 [FIO-K19-B] FiiO [フィーオ] DAC内蔵ヘッドホンアンプ 下取り査定額20%アップ実施中!
¥240,624
税込
商品コード: FIOK19B