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ネットワーク再生からUSB DACのほか、HDMIまで装備
ヘッドホンDACでなく、ネットワークAVプリとして活用したい
FIIO R9
アバック専属覆面レビュワー「ラビットBW」です。今回も消費者目線で忖度なしに「白黒」判定すべく、自宅レビューします。

エミライ取り扱いのFIIO Electronicsは、DAP(ポータブルデジタルオーディオプレーヤー)を中心とした品揃えに定評があるオーディオメーカー。設立は2007年と意外に古く、中国のみならず世界でも最大級の商品展開力を持っています。

ラビットBWが道場破りで「アバックヘッドホン横浜店」を訪れたとき、リファレンスとして設置されていたヘッドホンDACが、このシリーズのスタンダードモデル「R7」でした。スマートフォンのような洗練された操作性を持ち、XLRなどプロオーディオ並みのインターフェイスを備え、華美さを抑えた意外に穏やかな音質に驚いた記憶があります。

「R9」は、その上位機種。価格はオープンですが、24年4月発売時の市場想定価格は269,940円前後と、「R7」の23年初頭発売時の市場想定価格125,400円の2倍です。果たして倍の価値があるのか?「R7」は記憶ベースですしヘッドホンでしか聴いていませんが、そのあたりを意識しつつレビューしていきましょう。


[特徴]

●製品のポイント
・高性能DACを左右独立で採用
・HDMIをARCのほかIN/OUTでも装備
・スマホのメリットとダイヤル操作のメリットを生かした操作性
・メタリックな鏡面仕上げボディに華やかなLEDライト
・768kHz/32ビット(SPDIFは同軸384/24ビット、光192/24ビット)、DSD対応、ネットワーク&USB-C対応の全部入り

●使ってみたら凄かった
・滑らかできっちりしたディスクリート感
・HDR対応でAACもそのままデコードするHDMI IN/OUT
・「これも出来たらいいな」を叶える機能全部入り


■「R7」を洗練させ、「HDMI」追加でよりオールマイティに 
「R9」は基本的には「R7」のアップグレード版。もちろん音はDACチップだけで決まるわけではありませんが、HPを見ると一番のウリとして掲げられているのは、「R7」がESSの2ch DAC「ES9068AS」を使用するのに対し、「R9」は二基の「ES9038PRO」を左右独立で採用している点が際立っています。それに伴い、アナログのデバイスもよりハイグレードなものが採用されていると想像できます。

箱出ししてビックリしたのは、指紋が気になるほどテッカテカの鏡面仕上げボディ。音への影響を配慮した高密度亜鉛合金構造採用の象徴と言えそうです。放熱にも寄与していると思われ、ファンレスで静かですが、パワーアンプでもないのに使用中は結構熱を持ちます。

起動したときのレインボーカラーは、自作タワーPCみたい。サンプリングレートによってLEDの色が変わるようにできる趣向(HQが黄色、DSDがが緑・・・)も、日本やヨーロッパのオーディオ機器ではなかなか思いつかない遊び心です。


大胆な放熱口


天板は高級感のある鏡面仕上げ

興味深いのは電源周り。産業用レベルの電源を搭載するほか、耐ノイズに有利と言われる外部DC電源を繋ぐこともできます(15Vー3A以上)。もっとも、AC電源使用時にグランドループを解消するグランドリフト機能も搭載しています。また、デジタル部とアナログ部を分離するほか、アナログ部でも多数のLDO(Low Drop Out)レギュレータを使用する手法を採っているとのことです。


AC/DC切り替えは背面ディップスイッチで


・・・と蘊蓄はここまで。使い勝手や音質が良ければそれでいいので、さっそく聴いていきましょう。せっかく「アバック」ブログなので、HIFI、ホームシアターでの使い勝手を検証するため、今回はヘッドホンは使わず、デスクトップ&リビングミュージックと、「R9」になって追加されたHDMIを使ったシアターシステムとしての可否を判定します。

■ネットワーク再生 滑らかなサウンドが印象的。声フェチにもアピール
まず、ネットワークプレーヤー&プリアンプとしての性能をチェックしてみましょう。拙宅のリファレンスである独Accustic Artsプリメインアンプ「Power-1MK3」をSURROUND(パススルー)入力に繋いで単体パワーアンプとして活用、スピーカー「KEF Reference5」を鳴らします。いずれも素直で自然な音場と正確な定位でSNも良く、繋ぐ機器の違いも分かりやすくて気に入っています。ちなみに普段は、この「R9」のポジションに、音楽再生ではLINN「SELEKT DSM-K」、AV再生ではヤマハ「CX-A5200」が座っています。


電源コードを繋ぎ、AC電源で動作させます。DC電源は15Vのものを持ち合わせていないので確認できませんが、イイものを繋げば変わるでしょう。
入出力端子の充実ぶりは凄まじくAVプリアンプを最小化したような印象です。「R7」と違い、HIFIクオリティのケーブルを接続しても1kgアップの重量のおかげか位置がずれる事もありませんでした。


ボリュウムノブも兼ねた電源ボタン2秒押しでON。ボリュウムノブも兼ねており、回すとゲインが2160×1080解像度の6インチディスプレイに表示されます。
「R9」をヘッドホンアンプとして使う場合は、その下のアナログ出力切り替えノブを「PO(Phone Outと思われます)」に。今回のようにプリアンプとして使う場合は「PRE OUT」に合わせれば、RCA出力とXLR出力から信号が出ます。


ゲインの調整も可能。


「R9」には、「Roon Ready」「Android」「Pure Music」「Bluetooth」「USB DAC」「COAX」「OPT」「AirPlay」「AV IN」「AV ARC」の10種類の再生モードがあります。LINNの主要なネットワークプレーヤー&プリアンプ同様、スマホを活用したBluetoothなどの手軽な再生もできますが、より本格的なネットワーク再生や、パソコンと繋いでUSB-DACとして使えるほか、HDMI接続してAV(Audio & Visual)鑑賞もできるワケです。切り替えは、電源長押しか、メニューのドロップダウンで行います。


初期設定では「Android」モードになっていますが、ここではFIIO独自の「Pure Music」モードを試します。Andoroidサードパーティーのアプリがなくなり音質面で有利です。


有線LANで繋ぎ宅内NAS内の音楽ファイルを再生します。「R7」では滑らかでスムーズな出音が印象的でしたので、「R9」もまずクラシックから試聴します。

女性トランペッターのアリソン・バルサムによるクリスマスアルバム『Jubilo』では、教会で重厚にグワーンと響くオルガン伴奏やオーケストラアンサンブル、合唱との掛け合い、それに負けないようトランペットが突き抜けるように“通る”かが聴き所。曲によって古楽器を使い分けているのも聞き取れ、トランペットがちゃんと主役として立っています。低音域の重厚な押し出しや荒々しさ、音階の明瞭度は、ハイエンドオーディオのような忠実再現というより、滑らかかつ耳あたりいい仕上がりとなっている印象です。


HQ(ハイクオリティ)ではLEDがイエローに

映画音響も手掛けるピアニスト・作曲家のアルベルト・ギノバルト『ピアノ協奏曲No.1』は、静謐でロマンティックなピアノソロと、壮大なオーケストラとの力強いスケールのコントラストが聴き所。こちらも、ひとことで言うととにかく滑らかだなぁというのが第一印象。ピアノもヴァイオリンも、まるでスムージングを掛けたかのようにツヤッツヤです。
一方、オーケストラとは真逆の激しいBABYMETALにすると、表情が一変。ドラムスの低音が“量で”押し寄せ、ギターやヴォーカルの高音域がつんざくように強めに迫ります。若干エフェクト掛かったようにも聴こえますが、BABYMETALでキュートなヴォーカルを主に堪能したい向きにはいいかも知れません。そこから推察するに、女性の声優さんの声をヘッドホンで聴き入るようなフェチっぽい聴き方が好きなユーザーにはアピールできそうです。

フェチっぽい聴き方ということでいえば、ビル・エヴァンス・トリオ『ワルツ・フォー・デヴィ』のようなジャズのライブ音源も一聴の価値があります。これまで色々な場面や装置で聴いてきましたが、ピアノのアタックやドラムスのブラシがやや強めのニュアンスで新鮮です。

定位という意味では、奥行き感や広がりはそれほどありませんが、左右のセパレーションやファントム(センター)定位はなかなかキッチリしています。

CDリッピングのようなSQ(スタンダード)では水色に

ちなみに、「Sound Effect」というEQの機能があります。かなり極端なイコライジングなのですが音楽が破綻するほどではないので試す価値はあるかと思います。カスタマイズも可能で「ユーザー定義」として保存できます。



■USB-Cで外部DACとして使用

次に、「R9」をUSB-DACとし、MacBook Air(2022、M2)とUSB-Cで直結して試聴します。再生アプリはAudirvana Studio。



Mac側の設定。ドライバーのインストールは不要

Audirvana Studio側の設定画面


チック・コリア縁(ゆかり)のメンバーによるトリビュートアルバム『Spirit of Chick Corea』でマリンバとウッドベース、ドラムスのトリオを聴くと、若干緩めで響き多めの円やかなサウンド。とはいえ誇張感はないので、耳あたりのいい聴きやすいサウンドです。

DSDファイルの大貫妙子『PRISSIMA』も滑らかでメロディアス。若干華やかで艶のあるヴォーカルを再現しました。


CDリッピングファイル=SQは水色のLEDです。システム設定で「ディスプレイ」「インジケータ・ライト・コントロール」で、明るさ、点灯状態、レインボーカラーか固定色かなどが設定できます。

こうしてDACとしての機能むき出しで使う場合は、FIIOの「Pure Music」再生で使ったEQ「Sound Effect」とは異なる、「音声」メニューにある「可聴帯域外フィルタ」が使えます。
この設定次第で音の印象がけっこう変わるので、案外使いこなしのポイントだと思います。色々な曲をもっと聴き込めば印象が変わるかも知れませんが、POPS(大貫妙子、K-POP)、JAZZ(チックコリアトリビュート、キースジャレットトリオ)、クラシック(春の祭典)をそれぞれ聞き比べた印象は以下の通りです。


(1)「Linear phase fast roll-off filter」響き多めでキラキラした印象もありやや誇張感がある楽しいサウンド。
(2)「Linear phase slow roll-off filter」すっきりして見通しがいい、かなりすっぴん目なサウンド。個人的には好み。
(3)「Minumum phase fast roll-off filter」重厚とまではいえはないがウッドベースなどやや厚めに。ただ案外見通しもよく、ジャズ全般に心地よさげ。
(4)「Minimum phase slow roll-off filter」中低域が(3)よりさらにだぶつき気味、オーケストラにはよくてもジャズやロックにはやや過剰か。
(5)「Apodizing fast roll-off filter」余韻の少ない急峻なややキツメのサウンド。最近のデジタルサウンドっぽいトーンなので、SF作品にもいいかも。
(6)「Hybrid fast roll-off minimum phase filter」まったりした印象でアンサンブルに合いそう。
(7)「Brick wall filter」どこか懐かしく感じる従来型のザ・オーディオサウンド。往年のオーディオファンに好まれそうです。


ちなみに、「R9」はストレージも内蔵しています。拙宅の場合はMacですので、他のDAPと同様、USB接続するとAndroid Transferアプリが起動。ファイルをドラックドロップすれば転送完了です。


■HDMIで映画やSACDを。どんな信号もきちんとデコード

最後に、UHD BDプレーヤー「UBP-X800M2」をHDMIで繋ぎ、映像コンテンツを再生しましょう。「ARC」でも使えますが、ここはAVセンターのように映像も通す「AV IN」モードを使ってみます。


滑らかで声がいいという音楽再生の印象から、アニメーション映画の再現性がよさそうと踏み、4K Blu-ray『ヴァイオレッド・エヴァーガーデン』(Dolby Vision HDR/Dolby Atmos)を再生します。
すると、プレーヤー側の音声設定がオートのままで、HDR10もきちんと通しましたし、Atmosサウンドもキチンと処理できています。


ちなみに、レコーダーの地上波もそのまま受けましたので、AACもデコードできているようでした。これは便利。さすがHDMI機器に強いエミライ。

肝心のサウンドですが、女性のハイトーンも男性の厚みのあるヴォイシングも狙い通り。定位も予想どおりキッチリセンターに出て、ニュアンス豊かです。やはりアニメーション作品らしい作り込まれた音源が得意な印象です。

さらにSACDを読み込ませましたら、これもそのまま再生されました(もっとも、サンプリングレートを表すLEDは黄色になったので、どこかでPCM変換されていると思われます。)。テラークのロリン・マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団『春の祭典』は、とくにティンパニーの“ドーン”という低音域の再現性、金管の煌びやかさのリアリティでは、さすがにハイエンドオーディオと比べるのは気の毒ですが、むしろそこを敢えて無理に出そうとしていないところは好感が持てます。
■結論 どんなデジタルソースも一元管理。多彩な機能が魅力

今回はネットワークオーディオ、DACとしてのポテンシャルを検証しました。R7を相手とした場合、スピーカー試聴でも、明らかに上な定位感と、滑らかかつ上質なトーンの面で一枚上なのは明らか。HDMI信号への対応力も含め、十分なコストパフォーマンスを確認できました。

「Pure Music」モードでの「Sound Effect」と、DACとして使う場面での「音声」メニュー内「可聴帯域外フィルター」の使いこなしは、イコライザーに抵抗が無い設定マニアにはハマるでしょう。

これだけ様々なソースに多彩な入出力を持ち、無理のない自然な音質で聴けて、20万円台なら安いのではないでしょうか?アバックユーザーにとってはとくに、HDMIがARCだけでなくスルーでも使える(しかも再生機側でPCM出力設定するなど気遣いしなくてよい)のは便利です。今回は試していませんが、DDコンバータとしても使えたり(一部出力制限あり)、単なるヘッドホンDACとして使うのではもったいない、多種多様な顔を持った多目的ハイクオリティDACプリとしてCP値は抜群といえるでしょう。


アバックの隠れ覆面レビュワー「ラビットBW」です。もしもネットでポチったらどうなるか?を一般消費者目線で忖度なしに「白黒」判定すべく自宅リポートします!
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