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[自宅レビュー!]
ヤマハ NS-600A
何だ?この深みにハマる驚くような生々しさは!
“オーディオ”のイミ再考を迫る、独特の音楽性と音場感
覆面レビュワー「ラビットBW」です。今回も消費者目線で忖度なしに「白黒」判定すべく、自宅リポートします。

今回は、注目の新製品を速聴、速報!ヤマハの中級ブックシェルフスピーカー「NS-600A」を、純正スタンド「SPS-800A」とともに自宅レビューします。ニュースリリースの写真じゃ全然伝わらない高級感たっぷりの佇まい、クラシックをスケール感豊かに表現する「これがヤマハが考える“オーディオ”だ!」と言わんばかりの独特の音場感に驚きました。


[特徴]

●「NS-600A」のポイント
・振動板にZYLON(ザイロン)やピアノの響板に使用されるスプルースなどを混抄(こんしょう)した独自の「HARMONIOUS DIAPHRAGMTM(ハーモニアスダイアフラム)」
・16cm口径「NS-800A」に対し、「NS-600」は13cmウーファーを採用(ドームトゥイーターは3cmで共通)
・トゥイーター背後の共鳴を抑制する「R.S.チャンバー」、定在波を解消する共鳴管「アコースティックアブソーバー」など、フラッグシップモデルで採用した技術を継承
・ピアノフィニッシュの美しい外観
・内部も楽器メーカーならではのノウハウ満載。ヤマハならでは“音楽体験”が得られる


●実際使ってみたら凄かった!
・13センチウーファーらしい機敏さと、サイズを超えたスケール感が"なぜか"同居
・ドームトゥイーターがもたらす、広大なエア感
・華やかながら耳あたりのいい高音域
・ピアノそのものの上質な仕上げ
・組み合わせ超推奨!めちゃくちゃこだわっている専用スタンド


●こんな人には別モデルの方がいいかも
・分析的で、定位感、解像感、音像にこだわる人
・フラットな周波数特性などスペックから選びたい人
■現物を見てほしい!13cmなのにサイズはロクハン(16cm)
拙宅に、2月中旬発売したばかりのホットなスピーカーがやってきました。ヤマハの2ウェイブックシェルフスピーカー「NS-800A」「NS-600A」、専用スピーカースタンド「SPS-800A」のうち、連載担当が一目惚れしたという小さい方の「NS-600A」です。今回は専用スタンドとともにお預かりできました。ブックシェルフスピーカーはスタンド命ですからね。

いつも元気なヤマト運輸のお兄ちゃんが朝イチで届けてくれたのは、堂々の4個口。「NS-800」も一緒に届いたのかと思ったら本体より巨大で重いのはスタンド!
その専用スタンド「SPS-800A」、支柱は湾曲型のスチール、ベース部分は重量級のオーディオボードさながらで、重量は「NSー600A」本体の9.9kgを超える11.1kg。もはや立派なトールボーイスピーカーです。


本体「NS-600A」の方を開けてみますと、まさに"ピアノ"フィニッシュ!丁寧にテーパー掛けされたに違いないR、背後に向かって両サイドが僅かに絞り込まれたフォルムも、広報写真からイメージしていたよりずっと上品な佇まい。すぐさま新品のゴム手袋を倉庫に取りに走りました!







サイズも思ったより大きくて、この幅ならロクハン(6.5インチ、約16cm口径)ウーファーでも収まるサイズ。一回り大きいエンクロージャーは、厚みと内部までガッチリ組み上げられている予感を漂わせます。


上から見たところ。上が試聴方向、下がリア側。定在波を避けるためと思われるが、両サイドが後方に向かって絞り込まれている


スタンドに載せてよくみると、あららココにもヤマハお得意の「5本目の脚!?」スタンドとスピーカーの接点にはフェルトが配置されているのですが、4点の中心にもフェルトが貼られています。



スタンドと本体は、2本の立派なネジで固定するようになっています。
■艶と気品のあるサウンド。能率の良さ、SNの高さもメリット
かなりピカピカなのでじっくりエージングしてから・・・・・・といきたいところですが、今回はお預かりできる期間が短い。それに何より「はやく聴いてみたい!」といても立ってもいられず、さっそく拙宅の独Accustic ArtsプリメインPower-1 MK3と繋いで、第一印象を探ります。
まず高音域の華やかさが印象的。かといって、耳が痛くなるようなキンキンした感じではありません。


アナウンサーの声はやや艶があり、ビシッとしたセンター定位というよりは、フワリとした音像型か。拙宅のKEFのスピーカーReference5もどちらかというとマイルドですが、それよりもマイルド。マイルドというとぼわっと膨張した曖昧な方向をイメージするかも知れませんが、輪郭線を強調するようなエッジの効いた描き方ではなく、手描きの筆で描いたようなナチュラルな印象なのです。

もっとも、温度感としては、中域が膨らみ熱量があるウォームな従来型オーディオの方向ではなく、どちらかというと比較的クールでシャープネスを意識した気品の高い、上品なサウンドです。

また、ボリュウムをさほど上げなくてもしっかり音圧が出て、鳴らしやすそうなのも好印象。結構能率は良さそうです。そして、ボリュウムを上げるほどにラウドネスが掛かっているかのようにモリモリと低音が出てきます。バックロードホーン愛好家は結構ハマるかも。


また、特筆すべきこととして、音の“間”がとにかく静か。ボリュウムを上げなくても鳴るというのもあるでしょうが、SNがすごくいいんです。静かなフレーズが多いクラシックなんかきっといいだろうなと思いながら暖機運転を開始しました。

■楽器そのものの音に耳が行く、“解釈力”を持っている
わたしがちょうどこの頃外出続きだったこともあり、結局3日3晩のエージングを経た朝から本格的に試聴を開始。拙宅のアンプ等ともだいぶ馴染んできた様子で、ちょっと華やかすぎるかなと思っていた高音域も円やかになり、特定の音域の張り出し感も薄らいで、グンといい塩梅になっていました。

まず、拙宅NAS内の音楽ファイルの音を聴いていきましょう。ネットワークプレーヤーはLINNのSELEKT DSM(Katarist DAC)です。

まず得意なのは、アコースティック楽器のソロ。これはまさにピッタリで、楽器そのものが鳴っているようです。楽器の音色や音階云々を測定器のように正確に再現する、というよりも、それぞれの作品のよさをキッチリ伝えようとスピーカー自身が丁寧に解釈し、紡いていく印象。一品一品丁寧にテーブルに置いてくれる高級レストランのサーヴィスさんみたいです。
アリソン・バルサムが教会でパイプオルガンをバックにトランペットを吹くアルバム「Jubilo」では、教会の天井高やオルガンの重厚な響きといったホールの音場感よりも、メインであるアリソンのトランペット、さらにいうと唇の繊細な震えをイメージさせます。

シンバルなんか「グシャ〜ン」、バスドラは「ドッド〜グワ〜ン」というニュアンスが出て、とにかくライブっぽい。リズムも記号的に刻むのでなく、ちゃんと“人が”パーカッションを叩いているかのような人間味というか、揺らぎの表現があるのです。
当然、喉の震えであるヴォーカルのユニゾンなんか最高です。男声ヴォーカル4人組のAll-4-One『I Swear』のメンバーの声の違い、『So Much In Love』のアカペラに時折チリリリリと横切るトライアングル・・・聴いていてメロメロになります。

国産スピーカーというと、フラットな周波数特性至上主義のようなイメージがあるかも知れませんが、「NS-600A」は、特性だけでなく、人の聴覚や心地よさを優先したのではないかと思われるような不思議な世界観を持っています。さらに言えば、フォステクスのように奥へ奥へと深く音場が広がる鳴り方とも全然違います。

低音の出方も独特です。このサイズにして、結構量感たっぷりに出ます。トールボーイというよりは、むしろサブウーファーと組み合わせているかのような鳴り方で、ヤマハってともすると軽い音のイメージがあるかも知れませんが、この「NS-600A」は結構ピラミッド型。もっとも、制動の効いていない低域ではありません。誤解をおそれずに言えば、バックロードホーンのように、出るときはグッと吹き出してくるイメージです。


■最新POPSも“キモを押さえて”音楽的に伝える
したがって、最近の打ち込み系の曲も、キモを押さえて、不思議と音楽的に鳴るのです。上は煌びやかかつフェチっぽく、低音域はずーんと深く、それでいてきっちりリズムも刻みます。
BABYMETALではきちんとシャキシャキの世界観を表現しますが、全然五月蠅くならないのが面白い。もっとも、エッジーなアタック感ある鳴り方と対極ではあります。

Apple Musicで聴く最新のPOPSも然り。女声旋風花盛りですが、YOASOBI『アドベンチャー(Adventure)』から、テイラー・スウィフト『Anti-Hero』、マイリー・サイラス『Flowers』、オリヴィア・ロドリゴ『vampire』まで楽しく聴かせます。
とくに凄いのは、ビヨンセの新曲『TEXAS HOLD 'EM』。女声がフェチっぽく前に出てカントリー調にかき鳴らされるギター、ドンドンと踏みならされるバスドラ、割って入るヴァイオリン・・・「NS-600A」にピッタリの生っぽいサウンドだなあと思って聴いていると、曲の終盤にある回り込むような演出も驚くほど鮮やかに表現してくれて驚かされます。
■”音”ではなく“音楽”について語り合えるスピーカー
改めて魅力を再確認できたのが、ジャズヴォーカルのような小編成の“生録”。Alice Babs(アリス・バブス)のカバーソング『Yesterday』や『Close to You』のような、甘いピアノとウッドベースをバックに女声とコーラスが織りなすハーモニーは、とても魅力的。昔の生録のようなハイクオリティとは言えない音源でも、美味しいエッセンスをていねいに掬い上げ、生き生きと魅力的に鳴らしてくれます。

ふと思い出したのが、以前レビューしたヤマハのヘッドホン「YH-5000SE」。それと聴かせ方が似ている気がします。製品が聴き手を選ぶんです。オーディオマニアが聴いて「低音の出方が・・・」とか「高音の出方が・・・」とか評論する類いの製品ではないと感じました。音楽好きの人に対して、好きか嫌いかを“迫る”製品と言えるでしょう。

わたしだったら、ネリー・ファータードの『PROMISCUOUS』(2006年)あたりを世代の違う音楽好きの若い人に「NS-600A」で聴かせて、「この曲カッコいいでしょ」などと会話を交わしたくなります。

さりげなく「これがこの曲のそもそも狙った音作りだよね」というところを教えてくれる。何でも生演奏っぽく、スタイリッシュに聴けちゃう、ほんとに不思議なスピーカーです。


スピーカーシステムとしての設計の自信と、音作りのコダワリを感じさせる、シングルワイアリング

どこにそんな要因があるのかと考えると、ガチャガチャ余計な付帯音がないこと、SNが凄くよくて静かなことによるのかと思います。
でも、それ以上に、もしかしたら周波数特性とかタイムアライメント的には“正確な”音を狙っていないのかも知れないと。音響心理学的な要素を重視しているのかは分からないけれど、とにかく魅力的で音楽が楽しく聴ける、まさにYAMAHAが誇る楽器のようなスピーカーであることは間違いありません。


■ホームシアターでもリアルなセリフまわしがドラマ性を引き立てる
映像ソフトも視聴してみます。ソニーのUHD BDプレイヤー「UBP-X800M2」からHDMIでヤマハのAVプリ「CX-A5200」に渡した信号をプリメイン「Power-1 MK3」のパワーアンプダイレクトに入れ、「NS-600A」の2chで4K UHD BDを試聴します。

聖痕や奇蹟で民衆の人気を獲得した実在の修道女を描いたポール・ヴァーホーヴェン監督の映画「ベネデッタ」(UHD BD、DTS-HDMA2.0を選択)。修道院のホール感はマルチチャンネルに及びませんが、ゆったりと、ときに力強く描くオーケストラの劇伴が背景に流れるのと対照的に、激しく言い争う修道女たちたちのセリフがとにかく前に張り出て生々しく響き、作品のドラマ性を高めています。

「宇宙戦争」では、冒頭の男性ナレーションのヴォイシングと不安感を煽る神秘性を持った高音域のサウンドトラックのコントラストが印象的。高音域も低音域も時として強調されるので、サブウーファーなしでも“ヤツら”の攻撃は、聴感上の圧力として大きなものを感じます。Sci-Fiっぽいハイスピード感や切れ味よりも、羊羹のように濃厚・濃密な出音に起因する、音楽的かつエモーショナルなセリフまわしも得意です。



■まとめ 音楽的で濃厚な鳴り方。コンサート通いの人に勧めたい
ブックシェルフスピーカーとしては、正直、決して安くない価格です。しかし、これだけの物量と上質な仕上げ、さらに実際聴くと、何より他にはない独特の濃厚な世界観を持っており、むしろリーズナブルに思えてきます。

小編成のアコースティックから最新のものまで広く音楽を楽しむ方で、アンプやソース機器にさほど物量を掛けたくない、比較的小音量でも十分音楽的に音楽を楽しめるスピーカーをお探しなら第一候補かもしれません。従業員が毎週末コンサートに通うことを義務づけられているヨーロッパのスピーカーメーカーの製品ような、“音楽的感性の音作り”を感じます。

とかくマジメ一辺倒と思われてきた国産スピーカーの世界に、ものすごく面白い個性のあるスピーカーが登場しました。

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通常価格:¥198,000 税込
¥172,260 税込
商品コード: NS600A
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