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フェーズメーション「PP-200」「CS-900」
覆面レビュワー「ラビットBW」です。今回も一般消費者目線で忖度なしに「白黒」判定すべく自宅レビューします。

「フェーズメーション」は、その名の通り位相=Phaseの忠実度再生によって芸術作品を鑑賞しようというポリシーで、昭和45年にアイワをスピンアウトした鈴木信行会長が立ち上げたハイエンドオーディオブランド。その第一号からしてカートリッジでした。今回視聴する「PP-200」は、各賞を総ナメにした60万円ほどするフラッグシップモデル「PP-2000」の技術的ノウハウや素材をできる限り生かし、購入しやすい価格で製品化を実現したものです。今回はあわせてヘッドシェル「CS-900」も使ってみます。

●製品のポイント
・「PP-200」:フラッグシップ「PP-2000」の素材とノウハウを駆使し10万円を実現
・「CS-900」:アルミニウム削り出しの吟味された仕様

●実際使ってみたら凄かった!
・作品解釈のキモ「位相」を精確に再現
・音の位置関係が見える!「パースペクティブ」
・定位、響き、奥行き、滑らかさが価格帯越え
・“アナログっぽさ”という演出ナシ


■デザイン 飛行石のようなブルーの意匠が上品

カートリッジ「PP-200」は、フラッグシップ「PP-2000」のノウハウを生かしつつ、10万円というスタンダード価格帯に挑んだ戦略的モデルです。

ボロンカンチレバーにネオジウムマグネット、コイルに6N無酸素銅線を使用した、ラインコンタクト針のMCカートリッジ。



カンチレバーは上位モデルと同素材ボロンを使うことで量産効果を上げたこと、ジュラルミンベースとしたアルミニウムのケースの仕上げを、「PP-2000」のDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)処理から、「PP-200」ではアルマイト処理にしたことで、コストを下げています。



もっとも、現物からはコストダウンの面影は微塵も感じられず、某アニメーションの飛行石のように「バルス!」と声を掛けたくなるブルーの鉱石のようでむしろ「PP-2000」よりオシャレとも言えます。適正針圧は1.7〜2.0gと最近のモデルでは普通。

一方のヘッドシェル「CS-900」も、アルミニウム削り出しにアルマイト処理。カートリッジ「PP-200」と同じブルーとはいえ、それよりは薄いグレーがかって落ち着いたトーンで、黒基調のモノが多いカートリッジの多くに似合いそう。真ん中に穴が空いています。

■デノン DP-3000NEで聴く “アナログっぽい“演色はなく律儀で精確。そこにほんの少しの情緒が加わる

拙宅のプリメインアンプ、ドイツAccustic Arts Power-1MK3のフォノモジュールに接続します。スピーカーはKEF Reference5。どちらも色づけが少なくエッジレスの素直なサウンドで、繋ぐ機器の特徴を素直に出してくれていると考えています。拙宅のPower-1MK3のフォノモジュールにはインピーダンスの調整ディップスイッチがあり、MC用の100Ωに設定します。

まず、今話題沸騰中のデノンのレコードプレーヤー「DP-3000NE」と組み合わせます。

オーバーハング50mmに合うよう、ヘッドシェル「CS-900」に取り付け。この「CS-900」は、音質へのこだわりから端子部にゴムリングがなく、ネジは音質と強度を重視して鉄製。



リードワイヤーは4N銅線が付属しています。指掛けが大ぶりなのも使いやすく、仮にリフターがないアームとの組み合わせでも安心感があります。


まず、シティポップの代表格、大貫妙子のアルバムLP「シニフィエ」(83)を聴きます。


印象的なのは、楽器の中低音の響きが「ブルン」と芳醇で、ボーカルのエコーの響きが美しいこと。ボロンらしさが伺えます。かといって音像的に緩い印象はまったくなく、センター定位は引き締まっており、むしろ音場はnarrow方向です。その上で、バンドの各楽器はバックらしく後ろに展開、高域はフワリと空中に舞い拡がる一方で中低音は奥行き深いサウンド。定位や立体感に曖昧さがないのに、硬質なところはなく余韻がいいという、いいとこ取りなのが不思議です。クリアな水彩画といったところでしょうか。

続く女性ジャズヴォーカルEva Cassidy「Song Bird」(98)でも、中央に定位する声のしっとりとした味わいに対し、各楽器がバックで引き立てる前後の構成が立体的に目に浮かびます。とくに、ギターを爪弾く瞬間の弦の響き、フレットを押さえるときのグッとこもる感じ、高音に伸びる抑揚の揺らぎ、ハットのアクセントがグルーヴィーで印象的です。

チック・コリアのトリビュートアルバムLP「Spirit of Chick Corea」(22)は、1曲目『Armand's Rhumba』冒頭のスティーヴ・ガッドの「ドン」というドラムスからして量感たっぷり。しかもよく締まっています。エディ・ゴメスのベースやミカ・ストルツマンのマリンバとの掛け合いがわかるほど位置関係が明確で、なぜか演奏速度までもがそれに応じて緩急ついてビジュアルティックです。2曲目『Crystal Silence』でも、チックの妻ゲイル・モラン・コリアによる永遠の愛を込めたボーカルと、リチャード・ストルツマンのクラリネットの立ち位置や音色の違いが明確。位相がしっかりしているからでしょう、倍音の表現力に長けていることがうかがえます。ハイハットの「チッチッ」も決して耳障りでなく、自然ながら豊かな広がりを持っています。

そして個人的な定番ロックアルバムLP、ビリー・ジョエル「ナイロン・カーテン」(82)。ここまで聴いてきた女声の印象から、何らかの脚色を感じるかと予想していると、1曲目『アレンタウン』は存外クセのない、作品の印象通りの硬質かつ熱い音。さらに聴き込んでいくと、やはりハイハットの響きがほんの少し華やかで鮮度高く、ボロンっぽく中低域が元気にグンと張り出して豊かなのが分かります。そしてその印象はA面ラストの『グッドナイトサイゴン』を聴いて確信に変わりました。ヘリのプロペラを思わせる音、戦争とは無縁に響く虫の音を思わせるハット、どこまでも深い闇を思わせる中低音の伸びが、鎮魂歌としてA面を結びます。

このキラキラしたハットと弾むような中低音を受け、次に手に取ったのが、レファレンスレコードの45回転盤「Dafos」(83)。スタジオ録音でなくオーバーダビングもミックスもナシと、録音もユニークな一枚です。演奏内容も、民族音楽のように打楽器が“カンカン”から“ドゥオーン”まで打ち乱れます。盤の溝を目視で眺めるだけでもその壮絶なサウンドがうかがえるのですが、「PP-200」と「CS-900」で聴くと、その場に立ち会ったメンバーの位置関係、彼らが“音楽演奏の一回性”を“記録する”というリアリティを追求した現場の緊張感までもがひしひしと伝わってきます。


以上から分かるのは、“アナログだから”という暖色や柔らかさといった脚色はなく、むしろ律儀で精確であること。音量を上げても全く五月蠅くなく、作品のエッセンスを余すところなく聴き手に伝えることに注力し、結果としてほんの少し情緒豊かな印象を与えているところに良心を感じました。
LINN LP12で聴いてみる 楽器の位置関係がわかる奥行き感。弦の響きと腰の据わった安定感が印象的

次に、リンのレコードプレーヤー「LP12」(トーンアームはAKITO2)で聴いてみます。「AKITO2」はユニバーサルアームでなくストレートアームですので、ヘッドシェル「CS-900」を外し、カートリッジ「PP-200」を直接取り付けます。


いつも自宅で聴いているカートリッジは、ライラの「HELIKON」。既に廃版ですが、発売当時20万円ほどの同社中級モデルでした。ボロンカンチレバーとネオジムマグネットで、どちらかというと精確な再現度志向なので、系統としてはフェーズメーションに似ているかも知れません。その前は、トーレンス「TD320MK3」にSME「3009S2」のユニバーサルアームでライラのスタンダードモデル「ALGO」を使っており、そのサウンドは「HELIKON」より少し大雑把で中低域厚めだったという印象があります。果たしてフェーズメーションのスタンダードモデル「PP-200」は、ライラのスタンダードラインを超えるか?

こちらの「LP12」では、よりダイナミックレンジが広いクラシックを中心に聴いてみましょう。180gリマスターEU盤です。


チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 マルタ・アルゲリッチ&ロイヤル・フィル、シャルル・デュトワ指揮」(71)。ちょっとゲイン高めで腰高な印象の一枚なのですが、「PP-200」では腰の座った安定感ある再生をみせてくれます。跳ねるような若々しいアルゲリッチのピアノを中心にした各楽器の位置関係と、デュトワらしいハーモニーの進行が美しく、やはり各楽器の定位感が印象的です。

「マーラー 交響曲第9番:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ジョン・バルビローリ指揮」(64)。弦の響きが美しく、奥行きも深い。アナログらしい滑らかさに満ちており、こういう作品こそとてもよく合います。とにかくダイナミックレンジが広く、ズーンと響くティンパニーなどは、到底10万円の音ではありません。加えて目の前にステージが拡がるようなパースペクティブ。目を瞑って、ゆったりと流れる時間を感じながら音楽に浸りたくなります。

このように、レコードプレーヤーを換えてもやはり印象は同じ。SNがよく、各楽器の定位感と奥行き感がきっちり描かれます。にもかかわらず、決して神経質ではない。とくに、弦の“ブルルン”という響きが豊かで心地いいのです。「フェーズメーション」の名の通り、位相にこだわってつくられているのだなぁと実感します。得意のトランス作りからくる精確な巻き線技術によるところが大きいのだろうなと思わせます。

改めて「アナログコラム」でも書きますが、「ステレオ再生」の醍醐味であるのが「クロストークがない」こと、そのために重要なのは「位相の管理」です。フェーズメーションのカートリッジは、たとえスタンダードモデルであっても、その点を愚直につくっているのでしょう。

楽器の位置関係や奥行き感、響きがいいのは、定位がいい証。フラッグシップ「PP-2000」と同じボロンカンチレバーを使っており、ケースの処理でコストダウンしているとはいえ、このサウンドでこの価格は破格でしょう。プロジェクターでも、パネルの選別品を“限定モデル”にしそれ以外をノーマル品として販売した例がありましたが、「PP-2000」と「PP-200」はそのような関係なのでしょうか…エントリーモデルという位置づけでありながら、当面買い替えたくような不満は抱かずに済むのではないでしょうか。

わたしはプレーヤーを換えるとき、カートリッジもライラのスタンダードモデルからから中級モデルにグレードアップしました。しかし「PP-200」を使っていたらそうはならないかも。よりハイグレードにするためには、数倍の出費が必要となりそうだからです。精確に作品性を再現して、聴き手に正しい解釈を提案してくれる律儀な相棒として、「PP-200」は間違いなく長く付き合える新定番といえるでしょう。



アバックの隠れ覆面レビュワー「ラビットBW」です。もしもネットでポチったらどうなるか?を一般消費者目線で忖度なしに「白黒」判定すべく自宅リポートします!
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https://www.avac.co.jp/buy/user_data/hometheaterreview

PP-200 Phasemation [フェーズメーション] MCカートリッジ

通常価格:¥121,000 税込
¥102,850 税込
商品コード: PP200
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