ページトップ

国内最大級のホームシアター&オーディオ専門店アバックが運営する公式オンラインショップ。


オーディオコラム
「トーンアームよりターンテーブルが大事!?」
目からウロコのレコードプレーヤー選び Part2
「ユニバーサルvsストレート、ベルトvsダイレクト」
覆面レビュワー「ラビットBW」です。初心者向けのアナログレコードプレーヤー解説として、前回は、ステレオレコードの仕組みからカートリッジ選びまでを紹介しました。

今回はその後半。一体で販売されることの多いトーンアームとターンテーブルについて、できるだけ技術用語や数字を極力使わぬよう優しく、でも意外な「製品選びのキモ」を押さえます。

●ポイント
・針が溝を走る……のではない!?
・トーンアームとターンテーブルの関係
・MM/MC、ユニバーサルアーム/ストレートアーム、ベルトドライブ/ダイレクトドライブ…といった仕組みの違いだけが性能を決めない

■針が溝を走るのではない!?
2chオーディオを楽しくするのは“ステレオ効果”であり、アナログではとくに「位相」管理が重要と前回書きました。精確なステレオを表現する「クロストーク」のない「ディスクリート」再生には、カートリッジの「針先」が、精確にレコード盤の溝から信号を取り出すことが重要です。

そのときのイメージは、レコードの針が溝の上を走って行くのではありません。むしろカートリッジの方が固定された状態で溝の方が進んでいくのであって、ターンテーブルの回転が「針先」に力を与えているのです。リンのLP12を開発したアイバーさんもそんなことを語っていました。


ターンテーブルが針にエネルギーを与える

ということは、カートリッジの針先だけがスムーズに動けるよう、トーンアームとターンテーブルの関係はリジットかつ一体で考えなければいけないということです。

レコードプレーヤーには細かい方式・メカニズムの蘊蓄がたくさんあるので迷うのですが、そんなときは、常にその基本原則に遡りましょう。

■ユニバーサルか、ストレートか
トーンアームには、ユニバーサルアームとストレートアームがあります。


ユニバーサルアームを採用するテクニクス「SL-1200GR2」


ストレートアームを採用したオーディオテクニカ「AT-LP2022」(生産完了)

このコラムを読もうという方々の候補はきっと、レコードプレーヤーにトーンアームも付いてくるモデル。逆に言うと、トーンアームでレコードプレーヤーを選ぶことになるケースもあるでしょう。

前回、レコード盤の元になる「ラッカー盤」の作り方を紹介しました。電気信号を受けた針が溝を刻む……この工程を反対に辿れば、精確にレコード再生ができるはずです。その意味では、針が平行に動くリニアトラッキング方式が理にかなっています。


インターナショナルオーディオショウに展示されてたバーグマン(デンマーク)のリニアトラッキングターンテーブル「Magne」

リニアトラッキング方式はテクニクスもかつて製品化したことがありますが、複雑な電子制御をターンテーブルと一体で設計してとても大変だったハズ。

そこで、一点の軸を固定してアームを振り子のように動かすトーンアーム(スイングアーム式という)が主流となっています。高性能の謳い文句としては、スイングするにあたり上下左右にブレ(ノッチという)がない、などと書かれているはずです。

この方式では、外周と内周でレコードに対して針が常に真っ直ぐトレースするのが難しい。内側にいくほど誤差(トラッキングエラー)が大きくなります。そこで、そのズレを最小限にするための「オーバーハング」を調整することが求められます。

これは、アナログ再生でキモとなる「ディスクリート」再生と「位相」管理にとても重要ですし、こうした細かい調整の積み重ねが、アナログ再生では機器の買い替え以上に影響することもあります。


デノン「DP-3000NE」では調整アダプターが同梱されており便利


SMEが最初考案したトラッキングエラー調整紙をリファインした、元SONYかないまるさんの「オーバーハングプレート」
http://kanaimaru.com/0000kanaimaru2018/200116livingroom/06.htm

型紙は自作もできますが、鏡付きのモノはカートリッジの平行がわかりやすくてオススメ。右は針圧計

また、針が内側に引っ張られる力(インサイドフォース)が生じるので、それを逃がしてやる機構(インサイドフォースキャンセラー)も設定してやる必要があります。
「インサイドフォースキャンセラー」は、針圧と同じ値にダイヤルを合わせればOK。

■ターンテーブルの重要性
レコードを載せて回転させるターンテーブルに求められる仕様は実にシンプル。(イ)滑らかに、(ロ)一定の速度で回せばいいだけです。

とはいっても、実際にそれを製品にするとなると様々な難関があり、やはりひとつの方式に収斂していません。

回転にムラがあると、音程が狂ったり音が濁ったりします。これは、スペック上では「ワウフラッター」として表れます。高級なモデルは、熱を帯びてくると回転が狂う等といったモーターの機械的精度(コギング)とともに、スピンドル(軸)、プラッター(レコードを載せる12インチの皿)の工作精度が重要になります。

また、カートリッジの針圧がせいぜい2g程度といっても、レコードとプラッター全体をドライブして針先に与え続ける負荷は計算上何トンにもなると言われます。だからモーターには、回転させる力(トルク)が必要です。

こうした条件を満たすため、モーター自体のトルクと精度を上げる工夫(DCかACか、コアレスモーターを用いる等)をしたり、ターンテーブル自体の質量を上げ惰性で安定した回転を得ようとしたり(メルコ、ノッティンガム・アナログスタジオ、ヤマハのように慣性モーメントを重視する方向)しています。こうした工夫を、メーカー各社が商品コンセプトに合わせて複合的に施しています。


1970年代後半大ヒットしたメルコ(現Baffaro)の大久保式糸ドライブプレーヤーは砲金製ターンテーブル+鋳鉄製プレーヤーベースで一世を風靡

そんなターンテーブルの方式には、主に二つ、

(A)ベルト(または糸)ドライブ
(B)ダイレクトドライブがあります。

(A)はゴムのベルトや凧糸などでモーターの軸(スピンドル)の回転をプラッター(レコード盤を載せる円盤)に伝える方式。こちらが現在主流となっています。モーターの振動がレコード、ひいては針に伝わりにくく、機構が単純なので安く造ることも可能です。

(B)は、モーター直結のスピンドルの上にプラッターを載せて駆動する方式です。日本らしい、日本発の画期的な方式で、回転数がひじょうに遅くていいので振動も少なくできることから、再び高級機として人気が出ているのはご承知の通りです。

テクニクスのSL-1200シリーズも元来DJ仕様ですから、レスポンスのいいダイレクトドライブです。デノンは「デンオン」時代、放送局用にすぐキュー出しできるプレーヤーを要求されたので、すぐ回転数が安定するようプラッターを軽くしてダイレクトドライブを製造しました(最新の「DP-3000NE」はそこまでストイックに造られていませんが)。

音楽鑑賞用としてみれば、モーターの振動が伝わりにくいベルトドライブや、スタート/ストップが瞬時に要求されないので慣性モーメントの高いモデルでいいともいえます。

一方、ダイレクトドライブ方式の場合は、回転の狂いをコンピューター制御するなど、新しい技術も盛り込んだ日本らしい精確な技術力が光ります。
試聴した印象では一概に優劣は付けられません。各社、コストや部品調達の関係で最適なものを組み合わせてトータルのシステムとして組み上げているからです。

古い資料を漁ってスペックや部品を調べてみると、アナログ全盛期のプレーヤーが欲しくなるかも知れません。でも、実際に再生して楽しむためには、精確で安定した動作をしており、購入しやすくメンテンナンスも困らない(コレ大事!)製品でなければ意味がありません。

たとえれば、「当時の羽生7冠といまの藤井8冠が対戦したらどっちが強いか」みたいなもの。いま当時と同じものを新品で同じコストで作ることは不可能です。サエクのトーンアームWE-4700のように、むしろ現代の技術で作り直した方が工作精度は高く優秀かもしれない。ノスタルジーに浸るのが目的でない以上、安易にオークションに手を出すのではなく、現行製品の新品から選ぶのが結果的にコストパフォーマンスはいいように思います。


OTOTEN2023に展示されていたサエクのトーンアーム(ラックスマンと共同開発、PD-191Aに搭載)も、新造のユニバーサルアーム
>結局どれを選べばいい?

レコードプレーヤーを選ぶ視点は、日本メーカー主導のダイレクトドライブかそれ以外かが第一関門。それは後に述べるように、トーンアームをユニバーサルアームにするかストレートアームにするかが決め手になるかも知れません。カートリッジをあれこれ交換しながら使いたい方は、ユニバーサルアームを選びましょう。

一方、あまり交換しないならストレートアームでいい。ベルトドライブ方式にたくさんの製品がありますので、ご予算に応じて選択できます。わたしも以前ユニバーサルアームのトーンアームSME3009Series2付きのトーレンスのベルトドライブを使っていましたが、使うカートリッジがある程度決まってからは、ストレートアームAKITO2付きのリンLP12を使っています。

一方、せっかくなら日本ブランドのダイレクトドライブにしたい!という気持ちも凄くよく分かります。その代表格、デノン「DP-3000NE」と、テクニクスのSL1200シリーズは、どちらもユニバーサルアームが装着されています。

かつてはダイレクトドライブ方式のプレーヤーにもストレートアームが付いていました。わたしも学生の頃はそんな仕様のトリオKP-880Dを選びました。
しかし現行製品では、ダイレクトドライブ方式の主力モデルはユニバーサルアームを搭載しています。日本人がカートリッジをあれこれ替えて使うのが好きだからでしょう。

家にたくさんのレコードがあり聴き直そうという方は、いろいろなカートリッジやヘッドシェル「沼」に今一度ハマるためにも、まずはダイレクトドライブ+ユニバーサルアームのモデルを候補にするのがいいんじゃないでしょうか?

PD-191A LUXMAN [ラックスマン] ベルトドライブアナログプレーヤー 下取り査定額20%アップ実施中!

通常価格:¥990,000 税込
¥861,300 税込
商品コード: PD191A
数量
カートに追加しました。
カートへ進む