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製品インプレッション プロジェクター

ハイエンドプロジェクターEH-LS10000インプレッション

製品インプレッション ハイエンドプロジェクターEH-LS10000

エプソンから初となるハイエンドプロジェクターEH-LS10000が発売となりました。


ここ近年液晶プロジェクターは目覚ましい進化を遂げており、2007年に発売されたJVCの「DLA-HD1」に始まり、2011年にソニーの「VPL-VW1000ES」が発売されるまではJVCがプロジェクターのクオリティを牽引してきました。2013年にはソニーの「VPL-VW500ES」(以下、VW500)が発売され上位クラスは4Kプロジェクターが人気を集めるようになりました。
お客様のニーズもネイティブの4Kパネルに移りかけてきているところで、このエプソンの「EH-LS10000」(以下、LS10000)は登場しました。



LS10000はJVC同様に画素を斜めにずらす擬似4K方式を採用しており、ネイティブ4Kに話題がシフトしつつある今、なぜこのプロジェクターのインプレッションを書いてみようかと思ったか?それは、実際に映像をいろいろと視聴してみて、これはプロジェクターのトップモデルのエポックメイキングな製品になると感じたからに他なりません。


このプロジェクターが今までと何が違うのかというと、他の製品では水銀かキセノンのランプを使っていますが、LS10000はレーザーの光源を用いています。OptomaからもLED光源を使った「HD90」という製品が発売されましたが、これから各社の上位モデルはこういった新しい光源を用いた製品にならざるを得なくなるでしょう。LS10000はその先駆けとなる製品であり、実際の目で確認すればその理由もきっと納得できることと思います。


プロジェクターで一般的に使われている水銀ランプは200時間前後で明るさや色特性などが落ち込んでいき、徐々に暗くなって色も落ちていきます。
最初の状態から500時間もすればやや落ち込んできたのが実感できるレベルなので、(ランプの個体差などもありますが)最も色再現の良い状態を維持できるのは200時間ぐらいまでがいいところです。


今回のエプソンのレーザー光源は一番明るいモードでも推定20000時間という寿命ですが、レーザー光源の凄いところは時間経過による落ち込みがランプとは大幅に異なり、切れる直前までほぼ最初の状態に近いレベルを保つそうです。


レーザー光源はコストがかかる為、あくまでもトップクラスの製品のみでの採用になると思われますが、他社でも今後似たような光源を搭載しホームシアター用製品を出してくることが予想されます。ただし、最初からここまでの完成度で市場に投入したEPSONのモノ作りは大いに評価できると思います。



今回のインプレッションはこの光源のメリットをメインに紹介していきたいと思います。


シアター用プロジェクターで使われる水銀のランプで色の再現性を高めるには、何らかのフィルターを通して色の補正を行い、更に映像処理回路側で色の補正を行います。
現行モデルで言えばJVCの「DLA-X700R」(以下、X700R)は水銀ランプで色の再現性が最も高い機種ですが、フィルターを使用する事で高いレベルの色の純度は出せても白ピーク側(明るさ)の情報はどうしても抑えざるを得ません。わかりやすく言えばホームシアター用のプロジェクターはサングラスをかけているという事です。
これはX700Rに限らず他の今までのプロジェクターでも同様で、特にホームシアター用途に限って言えば明るさを多少抑えても色再現性と暗部の階調を重視した画作りの為、白ピークが抑えられていても十分クオリティの高い映像と思えてしまいます。
そこにLS10000という全く新しい光源を持った製品が現れたわけですが、LS10000のレーザー光源はハイブリッドタイプで、赤と緑用に1つ、青用に1つのレーザー光源を用いる贅沢な仕様になっており、下記の画像のような構造になります。



※エプソンの資料より

こうやって純度の高い赤青緑を取り出すのですが、3原色のレベルがバランスよく取り出せることによって余計なフィルター使用を極力抑え、白ピーク側に影響が出にくいメリットがあります。白ピーク側が綺麗に出せる事によって視覚的な明るさやコントラストもスペック以上に見える事になります。


また、今のプロジェクターは「オートアイリス」というシーンに合わせて光量を調整する機能を持っていますが、この機能は明るいシーンや暗いシーンに合わせてアイリスが連動して動いており(開閉動作)、シーンの切り替わりと同時に瞬間的に動作するわけではありません。
ところがLS10000はこのオートアイリスをレーザー光源側で行ってしまいます。
明るさの可変をレーザー光の強弱により行うため機械的な機構を用いる必要が無く、さらにオートアイリスの機械的な動作よりも大幅に早く追従できアイリスの動作音もありません。またレーザーでは光源を瞬時にOFF状態にできるので、全黒信号が来た時には「パーフェクトブラック」という全黒を出すことも可能です。
さらにオートアイリスの構造で光の量を絞ってしまうと色の特性も落ちますが、レーザー光源で光量を抑えてもオートアイリスのような色の落ち込みがないので、明るくても暗くても色の再現性が大きく変化しないのも今までにない魅力です。


これを踏まえて、今までのプロジェクターとどれぐらい差があるのか?
ここから比較画像を交えてご案内していきます。
※3機種比較なのでかなり長くなります。


まずは色再現性という点でわかりやすい赤色の情報量からみてみましょう。


映画「ムーランルージュ」のシーンから


LS10000(DCIモード)


VW500(リファレンスモード)


X700R(シネマモード)

VW500とX700RもLS10000を見なければ十分と思える色再現性ですが、LS10000はその上を行く純度の高い赤色を再現してきます。

ちなみに、この撮影時の各プロジェクターのランタイムはLS10000が約200時間、VW500が約500時間でランプパワーは「高」、モードは「リファレンス」、色の濃さを65まで上げており、X700Rは約400時間でランプパワーを「高」にしてモードは「シネマ」にしています。
また、LS10000はシーンに応じて光源の明るさを調整するモードにしているので、VW500もX700RもオートアイリスはONにしています。
LS10000の設定で明るさを一番抑えて色の濃さも10ぐらい落とせばVW500とX700Rに合いますが、今回はあくまでもLS10000のデフォルトに他を合わせる形を取っております。※以下、映画のコンテンツは全て同じ条件です。

VW500やVW1000/1100かX700RやX70/75Rをお持ちのユーザーなら、上記のような設定にするとかなり鮮やかに映せるというのはわかると思いますが、その状態と比べてもLS10000が際立って見えるのがわかると思います。
※LS10000は濃い赤の情報が多いので、撮影した画像だと暗い感じに見えてしまっておりますが、実際の映像は明るさの差はほぼありません。


続いて濃い色使いの映画で「オズ 始まりの戦い」から


LS10000(DCIモード)


VW500(リファレンスモード)


X700R(シネマモード)



デジカメだと少し大げさに捉えてしまうところもありますが、黄色の発色と赤の純度の差は確実に出ます。
LS10000とX700Rは近い感じですが、背景の薄い青空の色と雲の情報量も階調の再現性の差としてハッキリ出てきます。この微妙な階調表現力の差はまたあとで触れていきます。


次はアニメで「青のエクソシスト」から、原色系ではなく中間色の多いシーンで


LS10000(DCIモード)


VW500(リファレンスモード)


X700R(シネマモード)



実は実際に観た感じと撮影した感じでは結構違っていますが、撮影した状態もそれぞれガラッと絵が異なるので載せてみました。


女の子の薄い肌色と薄い黄色の描き分け、緑とオレンジの出方など、VW500では鮮やかすぎる感じで見えていますが、全体的に淡い色のシーンなのでLS10000とX700Rの方が実際の見え方に近い感じです。


アニメは基本的に線で輪郭を描きますが、LS10000の4KエンハンスメントのクオリティはVW500、X700Rと比べても優位性がある事が見て取れます。
アニメに限らず他の実写系の映像からもフォーカス感の良さは実感できると思います。このあたりはまた下の方でご案内を。


次は暗部での青と緑の再現性を、映画「マレフィセント」から


LS10000(DCIモード)


VW500(リファレンスモード)


X700R(シネマモード)


青と緑がかぶらずに深い色まで綺麗に出せているか、違いがわかりますでしょうか?
また暗い中でピンクの光りが輝くところを見てもパネルコントラストの高さが実感できると思います。


続いてコントラストという点で、ライブコンテンツから


コントラストはX700Rが120,000:1というパネルコントラストでスペック的にずば抜けているのはわかっているので、これにどれぐらい迫れるかがLS10000を見る前に期待していた能力でもあります。


まずは、ShaniaTwainのライブソフトからで、今度は並べて比較した映像で


左がVW500(TVモード)、右がLS10000(DCIモード※ライブ用に微調整)


左がX700R(ステージモード)、右がLS10000(DCIモード※ライブ用に微調整)


バックのLEDの照明が派手に光っているシーンなのでVW500もX700Rもアイリスはやや開いてしまっています。
こういった派手なステージではアイリスを閉じてしまっては華やかさが出せないので、そういう状況で周りの暗部や衣装の黒がどこまで締まって濃い色が出せるかが見所です。
LEDの白色の伸びはVW500、X700Rと比べても違いがありますが、VW500は「TVモード」で明るく鮮やかですし、X700Rも「ステージモード」でメリハリを重視したモードにも関わらず、LS10000ではこの差を出してきます。


別のライブコンテンツではポールマッカートニーのライブ、AlisonKraussが歌うシーンから

左がVW500(TVモード)、右がLS10000(DCIモード※ライブ用に微調整)


左がX700R(ステージモード)、右がLS10000(DCIモード※ライブ用に微調整)


このシーンだとVW500はアイリスがだいぶ閉じてしまいます。デジカメがVW500に対して感度を優先してしまうので、LS10000ではステージ上の白が飛んでいるようにみえますが、中央のステージや周りの細かいライトが綺麗に光っています。
X700Rも同様にアイリスは閉じていますが、パネルコントラストが高い分LS10000との差は少ないです(やはり違いは出てしまいますが)。
こういったシーンでは主役は周りの暗部ではなくステージの明るいところがメインなので、そこを優先で見せながらいかに周りの暗部を表現できるかでライブのような人工的に作り出した高コントラスト映像は印象がガラッと変わってしまいます。


色やコントラストという点でいろいろ観てきましたが、(デジカメの性能もあり本来の差をうまく出してくれないところもあるのですが)エプソン初のハイエンドプロジェクターのポテンシャルの高さは少し実感できたでしょうか?


色やコントラストなどのわかりやすい映像を選びましたので、どちらかというと映画っぽくないと感じてしまうかもしれませんが、今の撮影で使われるデジタルカメラの映像の基準がそういう画作りなってきておりますので、これぐらい出せないと本来の映像には近づけなくなってきています。
こういう映像クオリティはわかりやすく言うとプラズマの色の発色とコントラストに近いと思います。
ここまで出せる機種であれば、あとはお好みで色の濃さや明るさを設定で抑えてあげることでもっと落ち着いたシネマライクな映像も簡単に出せます。設定をさわるのが好きなマニアの方は調整し出したら止まらないかもしれません。


 

次は白側メインの映像から、階調や4Kエンハンスメントに関して比較画像を交えながらご紹介を。
LS10000の画素を斜めにずらす「4Kエンハンスメントテクノロジー」はJVCと同様のやり方で、擬似的な4K表示でネイティブ4Kではありません。
JVCは高速でずらした映像を交互に表示させているのに対してエプソンはずらして常時表示させているやり方。LS10000もX700Rも同じフジノンのレンズを使っていますが、価格帯としてはエプソンの方が上という事もあり映し出した画質差は確かにある。
実際にどれぐらい差があるのか、比較するとこの様な感じになります。


映画「マーベリックス」の冒頭のシーンから
LS10000(DCIモード)


VW500(リファレンスモード)


X700R(シネマモード)


波の細かい情報量でVW500に劣るという感じもなく、陰影やコントラストという点でX700Rに劣らないのがわかるでしょうか。


次は映画「インターステラー」の1シーンから4Kエンハンスメントの能力も含めていろいろ観てみます。
上と同じようにまずは全体での比較を


LS10000(DCIモード)


VW500(リファレンスモード)


X700R(シネマモード)


岩肌の情報量や陰影、空の微妙な白側の階調などトータルバランスでLS10000のクオリティの高さがわかります。
カラフルなシーンではないため、情報量をいかに出しディテールまで描けるかがこの映像に奥行きが出せるかどうかの分かれ目となります。


この映像の中で左の真ん中あたりにアメリカの国旗が立っていますが、これをアップで捉えてみると
LS10000


VW500


X700R


赤のラインがLS10000だけ一際違って見えるのがわかると思いますが、4Kエンハンスメントの処理と色の発色の良さも今までの製品と違う所が見て取れます。


LS10000の4Kエンハンスメントのモードによる効き具合もこのシーンで確認してみると

まずはOFF(画素をずらさないでダイレクトの1080p表示)から


4Kエンハンスメントの2だと


4Kエンハンスメントを最大に効かせると


このモードは多少やりすぎ感もあり使うのは観るコンテンツ次第ですが、「4K-2」からお好みで効き方を調整した方がバランスは良いと思います。


この斜めにずらす表示はJVCが最初に採用し既に3世代目となりますが、改めてどのような技術かわかりやすく説明すると
LS10000ではOFFから5まではノーマルの1080p表示でこのような感じになります。


画素がはっきり見えるのがわかるでしょうか。



4Kエンハンスメントを入れるとこの様な感じになる。


画素を斜めにずらすことにより画素数としては4K相当になり、ドット感のない滑らかな表示となります。
数字の4の斜め線や2などの曲線も滑らかになるので、基本的に4Kエンハンスメントは使った方がメリットは大きいです。


この映画の別のシーンからデジタルシネマ(DCI)と今までの色域の差もちょっと観て頂きたい。
まずはLS10000をDCIのモードにしてX700Rと比較した映像がこちら


左がX700Rで右がLS10000で、雲の立体感の違いがわかるでしょうか。


これでLS10000のカラーモードをシネマモードにしたのがこちら

LS10000のカラーモードを変えただけでも、これだけ階調が単調になってしまいます。
X700Rもこのシーンだけに特化してガンマや色を追い込めば同じぐらい出す能力は持っていると思いますが、LS10000はDCIの色域をカバーする色特性を持っており、赤青緑の色を最大域まで正確に取り出せる光源ゆえの微妙な加減の描写が特に印象的です。
DCIのモードを選んでほぼノーマルに近い状態でこの微妙な色情報を再現できる製品はLS10000だけじゃないでしょうか。

 

★総評

上記の他社ライバル機種との比較画像などからこの製品のポテンシャルの高さは十分実感できたかと思いますが、お店へご来店頂ける方は是非実際の目で見てほしいです。
今回はイベントという事でLS10000とJVC/X700R、Sony/VW500がある程度バランスが取れるようにそれぞれ微調整しているところもあります。
LS10000だけ一際違った映像にする事も可能でしたので、そういう点では実際に単体でいろいろ観て頂いた方がこの製品の魅力はもっと実感できると思います。


個人的にLS10000の実際の映像をみるまでは現行No1のパネルコントラストを誇るX700Rと比べても違いを出せるとは想像していませんでした。良くて同等ぐらいは行ってほしいなという期待でしたが、いろいろ観た結果それは期待以上でした。


今までエプソンのホームシアター用プロジェクターはミドルクラスまでがメインでしたが、長い開発を経て高コントラストの液晶パネルとレーザー光源といった技術が高い次元で融合し、今までにないクオリティを出せる上位クラスのモデルを世に送り出しました。
ディープカラーやXVカラー対応など、これまでも時代に応じた色域に対応したプロジェクターが出てきていますが、この製品の出せる色のレンジを知ってしまったら、今までの製品が物足りないようにしか見えてきません。
まさに「今まで見えなかった色が見えてくる」という感覚に近いのですが、今まで見慣れた作品でも「このシーンではこういう画作りだったんだ」と感じるところがあり、LS10000で映像を見ていたらそういう“気づき”を多く感じることができると思います。


この製品なら5年、10年使い続けても不思議ではないと思います。個人的にはこのクオリティを出せるようになるまでエプソンはあえてトップモデルを出さなかったのでは?と思えて仕方がありません。

作り手の本気が詰まった製品「EH-LS10000」を是非ご自宅でもご堪能下さい!

 

 

2015年5月 アバック 秋葉原本店 桜庭

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