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製品インプレッション プロジェクター

★JVC「 DLA-Z1」

Victor DLA-HD1


■ 場所:アバック秋葉原店プロジェクタースタジオ
■ 担当:桜庭(アバック秋葉原店主任)


2011年にソニーより「VPL-VW1000ES」が発売されてからの約6年、家庭用という領域で4Kパネルを使用したプロジェクターはソニー以外からは発売されませんでした。というより出すべき時期を待っていたと言ったほうが正しいかもしれません。


スカパーが2014年6月より試験という形で4K放送を開始し、ホームシアター用のAV機器でもネイティブ4K信号を出力する機器がようやく登場。それから2年後、2016年3月より4KのUHD BDソフトがついに発売となるが、当時国内で再生できるプレーヤーは1択しかない状況でした。

対して、初の4KプロジェクターであるVW1000ESも一度バージョンアップが行われましたが、残念ながら最新の4KのHDR信号への対応は叶いませんでした。


2016年秋・冬にはUHD BDソフトを再生できるプレーヤーやレコーダーの選択肢は徐々に増え、パッケージソフトの発売も続き、ホームシアターファンもいよいよ4Kコンテンツの視聴を考慮したい状況になってきました。


ソニー以降家庭用のネイティブ4Kプロジェクターが発売されなかった理由として、ネイティブ4Kプロジェクターを製品化する上で、内部回路の処理能力をどこまでのフォーマットに対応させるかの判断が非常に難しいことが挙げられます。現存する放送やネット系の4Kコンテンツ信号への対応だけでは不十分なため、パッケージソフトでの4K HDR信号の仕様が確実にわかった時点で最終的な仕様を決めて製品を作るしかないというのがあったのだろうと推測されます。


そこで満を持して登場したのがJVC「DLA-Z1」です。


ここ最近なかった久し振りの超高価格帯プロジェクターである為、「なぜこんなに高いの?」と思う方も多いのではないでしょうか。そこで、ネイティブ4Kプロジェクターは高くならざるを得ない理由を、下位クラスにあたるJVC「DLA-X770R」(疑似4K)と比較しながら観て頂きたいと思います。



まずは2KのBDコンテンツ「ダークナイト ライジング」より

IMAXカメラ撮影シーンの方がフィルムグレインノイズも少なく綺麗ですが、まずはBDの一般的な画質で見てみます。


まずは<DLA-X770R(以下X770R)>から

『DLA-X770R』で見る「ダークナイトライジング」


<DLA-Z1(以下Z1)>では

『DLA-Z1』で見る「ダークナイトライジング」

背景やバットマンの描写ではX770Rの方が少しザラっとしており、対してZ1の方が滑らかな感じがわかるでしょうか。


X750RからX770Rへのモデルチェンジで内部の処理エンジンはZ1と同等(Z1は同回路を2台使用しています)になっており、最終段で擬似4K表示させています。擬似4Kとしては「もうこれ以上は無いだろう」というレベルに達し、普通に観れば不満はほぼ出てこないと思います。(※ただし、2Kのパネルを半画素ずらして表示する際にフィルムグレインのノイズは少し誇張される印象があり、少し目立つと言えば目立ちます)


これに対しZ1は4Kの画素数になる事で2Kで見えていたノイズも小さくなる為、ノイズ感がかなり改善されているのが分かります。


これはソニーの4Kプロジェクターでも同様なので、ネイティブ4Kプロジェクターで2Kソースを観る際のメリットとも言えるでしょう。



次はBD(2K)とUHD(4K)ソフトのメニュー画面を使い見てみます。

BD(2K)「マイ インターン」のメニュー画面より


まずは<X770R>から

『DLA-X770R』で見る「マイインターン」


<Z1>では

『DLA-Z1』で見る「マイインターン」


Z1で観る2Kソースは(全てプロジェクター側で4Kにアップコンバートしています)滑らかさときめ細かさで違いがあるのがわかるでしょうか。

特に顔のシワや髪の毛などX770Rのe-shift(画素ずらし)では少し誇張される感じもありますが、Z1のアップコンバート映像では細かい部分の描写が保てます。


Z1でBDソフトをいろいろ視聴していると「4Kソフトじゃなくても十分じゃないか?」と思えてきますが、やはり4Kの情報量は凄いというところをお見せします。


次は4K UHDソフト「スノーホワイト/氷の王国」のメニュー画面より ※本編はメニュー画面と違ってフィルムライクです


まずは<X770R>から

『DLA-X770R』で見る「スノーホワイト」


<Z1>では

『DLA-Z1』で見る「スノーホワイト」


X770Rでも4Kソースの情報量の違いを十分感じる事ができますが、滑らかさや質感においては2Kから少し進化したかなという印象止まりとなってしまいます。


続いては2Kから4Kへ画素数が増える事で、特に「丸み」や「斜め線」の描写が明らかに変わる一例をお見せします。



UHD BDソフト「ルーシー」のメニュー画面より


まずは<X770R>から

『DLA-X770R』「描写」


<Z1>では

『DLA-Z1』「描写」

X770Rの擬似4K表示は2Kの画素を半ドット斜めに高速で交互に表示させているので、このように写真で撮ると改めて2Kであることが分かりやすく、ネイティブ4Kとの違いは見てのとおりとなります(写真撮影して拡大した場合の比較です)。


「スノーホワイト/氷の王国」でも確認した装飾や肌の質感などは今まで以上に緻密な情報を見せられなければネイティブ4Kの意味が薄れてしまう為、その辺りにもコストを上げざるを得ない理由が見えてきます。


プロジェクターという機械は離れた距離からスクリーンに映像を投射するため、3m~5mも離れたスクリーン上で細かいドットに対してフォーカスを合わせなければいけません。例えば2Kの場合、120インチ投影での1ドットは約1.4mm、一般的に2Kクラスで使用しているレンズでは2Kパネルの1ドットに対してフォーカスを合わせるのが限界です。対して4Kでは120インチで約0.7mmというドットに対しフォーカスが合せられなければ意味がなく、もしX770Rで使用しているレンズがZ1に使われていたとしたらここまでディテールの差は出せなかったでしょう。


(4Kパネルに対し)フォーカスを合わせられるのが画面の中央付近だけで周辺はややボケて表示される程度のレンズを使って4Kのプロジェクターを造っても、折角出てきたマスターレベルの4Kソースを正確に再現する事は難しく、「4Kってこんなレベル?」と思われるのでは意味がありません。


ご存知のようにZ1では相当高価なレンズを使用しています(Z1の業務用モデルの別売レンズ価格がなんと110万円です)。「画面中央だけでなく、周辺まで1ドット単位のフォーカスが損なわれない」、「200インチオーバーでの使用も想定し、レンズで明るさが落ちない」といった基準をクリアし選定されたハイスペックなレンズです。今回JVCとしては家庭用初のネイティブ4Kプロジェクターという事もあり、レンズに対しての妥協を一切しなかった結果として、この価格になってしまったのであれば納得がいくところです。


ちなみに、レンズフォーカスなどの調整をする際に表示される「クロスハッチ」の線(太い緑色がX770R、細い白色がZ1)を重ねて見ると、Z1ではこの細い線でもフォーカスを出す事が出来るレンズを使っているため、実は内蔵のクロスハッチの線も4K用になっています。



※X770Rのクロスハッチは2ドット、Z1のクロスハッチは1ドットで表示されています

クロスハッチ


また今回レーザー光源を採用したZ1ですが、3000ルーメンという仕様は単に明るいところでも視聴できるという事ではなく、コンテンツが持っている映像の明るさのレンジをしっかり再現するために必要不可欠な光学系のスペックであった事が想像できます。特にHDRのコンテンツは明るさのピーク位置が非常に高いので、この明るさのスペックが大変重要なのは皆さんが知るところかと思いますが、HDR信号以外の2Kコンテンツでもこの明るさは十分に活きており、特にライブ系映像ではステージの演出を忠実に再現してくれます。



以下ではZ1にてライブ系の映像を使い、同じシーンで明るさのモード「低」「中」「高」と比べています。

<低モード>

『DLA-Z1』「低モード」


ちょっと地味な感じですが、今までのホームシアター用プロジェクターはこれぐらいです(※低モードと言ってもZ1なので1000ルーメンぐらいはあると思いますが…)。


<中モード>

『DLA-Z1』「中モード」


恐らく2000ルーメンを超えるぐらいだと思いますが、「これぐらいは欲しいな」というライブステージの鮮やかな感じがようやく出てきます。


<高モード>

『DLA-Z1』「高モード」


一番明るい状態で、映像的には申し分ないのですが、ファンの音が結構大きくなります。

設置環境にもよりますが、一般的には「中」のモードで十分でしょう。

HDRソースを観る場合も同様に「高」のモードは選べますが、やや動作音がうるさいので設定は「中」にした方がオススメです。


最後はとっておきのUHD BDソフトの映像を使い、X770RとZ1の違いをお見せしたいと思います。

まずは「ボーダーライン」と「ハドソン川の奇跡」。この二つはマスターが4Kのため相当高画質だろうと思いX770Rで観たところ、「あれ、こんなもんか?」と感じてしまった作品です。やや引いたショットとアップのショットでの4Kの描写力の違いを見比べてみます。

「ボーダーライン」の引いたシーンで

まずは<X770R>から

『DLA-X770R』「ボーダーライン」


<Z1>では

『DLA-Z1』「ボーダーライン」

このシーンは手前の砂利から奥のフェンスの辺りまで全体的にフォーカスが合っており、Z1の4Kらしさが際立つのがわかります。


次は「ハドソン川の奇跡」からトム・ハンクスのアップを

まずは<X770R>から

『DLA-X770R』「ハドソン川の奇跡」


<Z1>では

『DLA-Z1』「ハドソン川の奇跡」


Z1は本当にデジカメで生撮りしたかのようなクオリティで、4Kの情報量を正確に描いている事がわかります。


この2つの映像においては、X770Rで視聴した際に「BDソフトでも十分かな」と感じてしまっていたのですが、Z1を通して観て改めてネイティブ4Kとレンズのクオリティの重要性を実感しました。



これまでは4Kマスターから起こした高画質BDソフトが持てはやされてきましたが、4K UHD BDソフトにおいては5Kや6Kのマスターを使用したような超ハイスペックソフトにも注目が集まり、4Kの解像度が如実に伝わるタイトルも目にするようになりました。


まだマスターが4K以上の作品は多いとは言えませんが、最後はその筆頭ともいえる「Allied(邦題/マリアンヌ)」を観てみましょう。


まずは<X770R>から

『DLA-Z1』「ハドソン川の奇跡」


<Z1>では

『DLA-Z1』「ハドソン川の奇跡」


(画像だとわかりにくいかもしれませんが)帽子の編み目やスーツの生地の質感からテーブルの上の小物など、Z1による視聴では今までそれほど気にしなかったような細かな情報にまで目が行ってしまいます。


このクオリティまでになると映画の内容より映像クオリティに魅入ってしまいかねませんが、このクラスにしか描けない4Kの圧倒的な描写が随所に確認できる必見のタイトルといえます。




★総評

定価¥3,500,000(税別)!
ホームシアターの超マニアでも「ちょっと買えないな・・・」と感じる金額かもしれません。実際ここ近年では同クラスの家庭用ハイエンドプロジェクターは存在せず、遡ると三管プロジェクターの8インチ管(1990年~2003年頃)以上か3板式のDLP(2003年発売:marantz「VP-10S1」)ぐらいしか300万円オーバーの製品は発売されていません。つまり、こういった価格帯のリファレンス機の出現は10年に一度あるかどうかです。


4Kの繊細な映像クオリティまでを求める事がなければ、X770Rクラスでも十分な画質が得られます。しかし、80万円前後のプロジェクターが業界のリファレンスとして評価され続ける事には、これまでのホームシアターの歴史を振り返ると微妙な物足りなさを感じていました。


そんな中、今回満を持して登場した「DLA-Z1」を歓迎しないわけにはいきません。


2011年に発売されたSONYのVPL-VW1000ESは「これからは4Kの時代だ!」という4K映像の新しい魅力をアピールする役割があったように思います。対して今回のDLA-Z1は「これが真の4Kクオリティだ!」とでも言わんばかりの映像を魅せつけてきます。


成熟を見せる4K時代に突如出現した、真のリファレンスプロジェクターになりうるモデル「DLA-Z1」。簡単に手にすることができないからこそ生まれる価値、そして「真のリファレンス機」だと実感させてくれる、そんな魅力がこのモデルにはあります。


実際に観始めてしまうと作品にというより映像美に惹かれて、今まで見慣れていた作品なのに改めて魅入ってしまう。 そんな圧倒的な存在感とクオリティを、ご自宅でも是非満喫して頂きたいと思います。


『DLA-Z1』

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