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製品インプレッション AVアンプ
シネマDSPの験算と新モードEnhanced物語る力
新フォーマットやハイレゾ、ネットワーク、視聴環境補正への対応に加え、基本中の基本である高音質への期待……AVアンプに課せられる様々な要求に予想を遙かに超えた次元のクオリティとファンクショナリティで応えたのがRX-A3060だ。前作RX-A3050を優に超え、CX-A5100+MX-A5000に限りなく接近した。

まず、前作RX-A3050からの改善点を押さえよう。RX-A3060は一体型として初めてドルビーアトモス、DTS:XのオブジェクトオーディオとシネマDSP-HD3(キュービック)の掛け合わせを実現。CX-A5100と同じくプログラム(22)のアルゴリズムがアップデートされている。シネマDSPの30周年記念新音場プログラムとして、3Dサラウンドにおいて、チャンネル間のつながり・移動感を円滑にする「Enhanced」を追加。部屋の音響特性とのマッチングを図る「YPAO プレシジョンEQ」機能は処理を64bitで行なう。ESSのデバイス、DSP、基本回路はA3050と同様だが音質チューニングに力点を置いた。

作品の世界観に誘う
繊細な表情と濃厚なニュアンス

さっそくBDのインプレッションに入ろう。「小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ」の『ブラームス交響曲第2番』は、A3050に比較し質感の大幅な向上が認められた。冒頭のチェロの雄大な柔らかさ、木管のしなやかさ、高弦のゆったとした潤い……ブラームスの世界に聴く者を誘う。ブラームス特有の超高弦の倍音感も気持ちよい。しなやかにして稠密なグラデーションが弦と木管で特に魅力的。第4楽章冒頭のチェロの弾みもわくわくするような気持ちよさ。トゥッティはしっかりとした構成感が聴ける。緻密さ、各声部の絡みの有機的な表現、低弦のスケールなどで優れる。

「ベルリン・フィルハーモニー/ジルヴェスター・コンサート2015」の目玉、アンネ・ゾフィー・ムターによる『サン=サーンス:ヴァイオリンと管弦楽のための序奏とロンド・カプリチオーソ』。序奏では表情が繊細で、一音一音のニュアンスが濃い。しっとりしたトーンで伸びのいい濃い音がムターの特徴をよく表している。G線の切れ込みも鋭い。メイン部での弾みと軽やかさや音色の華麗さはA3060の真骨頂だ。AE線から急にG線に移る移動の素速さ、対比感もダイナミック。ブラームス『ハンガリー舞曲第1番』では低弦の迫力に酔う。大編成でも音場の濁りが極少なので、重たい曲だがリズムと弦が縦線をきちっと揃えた律動の確かさを聴けるのだ。

映画物語を有機的に紡ぐ
新音場「Enhanced」

話題のAtmosとシネマDSPとの掛け合わせや新プログラム「Enhanced」だが、効果はひじょうに大きい。音と音の間の響きが明瞭になり、オブジェクトの重さと質感、さらにはドラマティックな濃い表情が加わる。「Enhanced」はさらに格段の効果。喩えると 2Kが4K+HDRになった程の違いで、方向が明瞭になり、音が立ち、同一方向の複数のオブジェクト間の空間感も緻密になり、音の移動感もまさに目で観るようだ。

BD「シカゴ」の最後の章、舞台で歌って踊る『ホット・ハニー・ラグ』。「ドラマ」では猥雑にして小気味のいい響きが厚く上質になった。歌声のハーモニーはクリアーで、空間感がより厚く音場の広がりが緻密。ステージの広さと奥行き感も出た。「Enhanced」はデュエットが歌うステージをあたかも客席で聴いている様な響きだ。楽団音が太くなり弾み感が濃くなる。楽器の方向性も明瞭で、場を感じる臨場性と質感のヴィヴットさが体感できた。

「マッド・マックス」は、「ドラマ」では雰囲気が濃く音の佇まいも豊潤。爆音の剛性が上がり低音の偉容感も増す。打撃音が広がるグラデーションには力感が付与される。「Enhanced」では音と空間と時間のリニアリティが向上、特異な世界をまさに実体験している感覚。音と響きの太さが眼前の臨場感を醸し出す。

セリフ、SE、音楽のそれぞれがひじょうに明晰で、さらにそれらが重奏したときのヴィヴットな現場感が「Enhanced」の狙いだと分かった。個々のオブジェクトが空間に離散的に位置するのではなく、相互に絡み合いながら有機的に紡ぐ。物語を強力に進行させるストーリー・テリング力が「Enhanced」の本質と私は聴いた。

YAMAHA RXA-3060

YAMAHA RXA-3060

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